244. 姫は『奢る』らしいです
そのあとも色々煮詰めて、事務所に企画書として提出する。あとは運営さんがどう反応してくれるかだな。
そして気づけば、お昼も食べずに企画の打ち合わせをしていたので午後3時を回っていた。
「これでよしっと。あとは運営さんの回答待ちだな。2人共ありがとう。楽しそうな企画ができたよ」
「いえっ。私の方こそありがとうございます!コラボ楽しみです!」
「私もマネージャーさんとゲームできるのわくわくします!」
「それなら良かったよ」
とりあえず、パソコンで他の要件を済ませていると衣音ちゃんが話しかけてくる。
「あの神崎マネージャー?」
「ん?どうかした?」
「その『姫宮ましろ』とマネージャーを両立するのって大変じゃないですか?」
「そうだね。でもオレは基本朝配信しかやらないし、彩芽ちゃんもあまりコラボしないから楽かな?とか言ったら彩芽ちゃんに失礼か」
すると今度は一ノ瀬さんが話しかけてくる。
「あのマネージャーさん?もし今誰かから連絡来たらどうするんですか?」
「前なら出なかったけど、今はマイクも持ってるし設定もしてあるから誰もいない場所とかで連絡するよ」
「えっど……ちょっと聞いてみたいです。一応信じてはいますけど、まだマネージャーさんが『姫宮ましろ』の実感がなくで」
「え?」
「私も思ってました。神崎マネージャーが『姫宮ましろ』になるところ見たいです」
「衣音ちゃんほんどに~?怪しいですよ今の~」
「え?本当ですよもう!それさっきの私のじゃないですか凛花さん!」
……なんか無茶振りのような気もするが。それにそう言われると恥ずかしいと言うか……でも確かにそう言う疑念は残っているのかもしれない。
「分かった。どうしたらいい?」
「う~ん……誰かに通話とか?」
「それなら七海ちゃんがいいんじゃないですか!こんな下らないことしてるって知っても怒らなそうだし!」
「七海さんいいですね!同期で一番仲良しですよね?あ。そう言えばこの前一緒にご飯食べてましたもんね!」
なんか勝手に盛り上がっているんだが……それに一ノ瀬さん、下らない自覚はあるんだな。……ごめん日咲さん。オレは同期の絆を信じるよ。そしてそのまま日咲さんにチャットを送ると『今暇だから大丈夫』と返事が来たのでディスコードを繋ぐ。
《どした姫?》
「あ。いや特に用はないんだけどさ、少し話したいかなって?」
(姫先輩だ!)
(ましろ先輩だぁ!)
《は?もうそれ寂しさ紛らわす女子じゃんw》
少し遠目にいる衣音ちゃんと一ノ瀬さんは更に盛り上がっている。とりあえず何か話さないと……
《なんか変だけど姫?》
「そっそう?」
《……もしかして誰かいるの?あー分かった。『ソプラノ』の案件受けたもんね。どうせ『姫宮ましろの声聞きたい!ポアロ先輩にかけましょう!あの人なら暇してるし、学力王もココアに負けたから弄ってやりましょう!』とか言ったんでしょ?こういうの考えるのあのゴスロリでしょ?しょーもない。》
「そこまで言ってないですよ!しかも最初に言い出したのラビさんですから!私のことなんだと思ってるんですか!」
《お前!こっち暇じゃねぇぞ!姫のこと困らせんなw》
「暇ってディスコード送ってたじゃんw」
「ごめんねポアロ探偵。あとでお菓子とアイス奢るからさ、許して?」
すると日咲さんは『それで許そう!』と言ってくれ、そのまま普通に少し雑談をしてから通話を切る。
「なんか無駄に奢ることになったんだが……」
「でも本当に姫先輩でした!なんか感動しちゃいましたよ私!」
「私もです!ああ……あの『姫宮ましろ』が側にいるなんて夢みてぇだ……」
「まぁ……信じてもらえたようで良かったよ」
そんなことをしていると、一ノ瀬さんのディスコードに連絡がくる。それを確認する一ノ瀬さん。するとなぜか焦り始める。
「どうしたんですか一ノ瀬さん?」
「凛花さん顔色悪いですよ?」
「あの……ごれ……」
そこには一ノ瀬さんのマネージャーさんからで、『今日の19時からの園崎ラビの雑談枠で『ソプラノ』とのコラボを重大発表として発表してください』と書かれていた。
「なっなぜ私なんですがね……?マネージャーさんや衣音ちゃんがいるのに……一番後輩ですよ?」
「なんかどっかで聞いたことあるなそれ。運営は結構スパルタだから、そういうのを経験させたいんだと思いますよ?あけおめ座談会も4期生スタートでしたし」
「19時じゃ急いでサムネ作ったほうがいいですよ?私も手伝いますよ凛花さん」
「そっそうですね!あの……マネージャーさん、衣音ちゃん、配信終わるまでいでくれますか?」
すごく不安そうな一ノ瀬さん。確かに重大発表なんて1人でやるのは怖いよな。ここは先輩として助けてやらないとな