294. 姫は『協力』してもらうようです
オレは朝配信をして、仕事をこなし、夜はゲーム大会に向けて彩芽ちゃんと共にゲーム練習をする日々を過ごしていた。
ジャンルは4つあり、まだ誰がどのジャンルに出場するか決まってないがこの約2週間で『音ゲー』『レース』のゲームを上手くなるのは難しそうだ。
そして今は桃姉さんとリビングで事務所に来ている案件の打ち合わせをしている。
「えっと……『戦乱の恋乙女・DX』……これ乙女ゲームだよな?」
「そうよ。リニューアルして新たなシナリオや機能を追加して、今話題のイケメン達が登場。さらにアニメ化も決定し、乙女達のハートを鷲掴みにしていると宣伝しているわ。新キャラの声優も有名俳優を起用してかなり力を入れているわね」
「はぁ……でもこれ女性向けだよな?」
「あんたは『姫宮ましろ』でしょ?仕事に私情を挟まない」
いや確かにそうなんだが……男のオレが乙女ゲームをプレイするとなるとこうモチベーション的なものが……やるならせめて女の子が出てくる恋愛シミュレーションだろ……
「配信が盛り上がるように頑張ってもらわないと困るわよ?」
「分かってる……あ。」
「なに?」
「……1つ面白いこと思い付いたんだけど」
オレは桃姉さんに思い付いたその内容を伝える。
「なるほど。面白そうだけど、許可をとらないと……」
「許可はオレが取る。もちろん配信も面白くするから」
「まぁ……あんたに任せるわ。配信は週末の20時からだから」
打ち合わせを終えて、オレは部屋に行きスマホで早速連絡をとることにする。
「あ。お忙しいところ申し訳ございません。神崎です。実はご相談がありまして……」
オレはそのまま内容を説明し、無事に許可をいただけた。必要なものは準備して……あとは配信当日を待つだけだな。
そして週末。時間は17時。もうひとつやらなければいけないことがある。この件には協力者が必要だからな。あるライバーのスケジュールを確認すると、歌枠の配信中だ。これなら凸しても問題なさそうだな。オレはそのままディスコードで通話をかける。
コメント
『エモかった』
『また一味違うよね』
『最高!』
「ありがとう~!この曲はさ、リコピン様の曲の中でもしっとりバラード系で、優しい声の中に強い信念が込められてて、かなえとしてはこの曲を歌うのは毎回緊張するんだけど、何とか上手く歌えてよかったよ!って!……え?」
コメント
『どうしたの?』
『トラブル?』
『大丈夫?』
「あっ違うの。ましろ先輩から通話が……どうしよ配信中なんだけど……とりあえず出てみるね?もしもし。すいません今歌枠の配信中で」
《こんばんは。すごい良かったよかなえちゃん》
「え?あっ観てくれてたんですか?ありがとうございます!あの……どうかしましたか?」
《うん。ましろさ1期生でしょ?かなえちゃんは4期生じゃない?先輩と後輩だよね?》
「え?はいそうですけど……」
《なんか……この前ドッキリされたんだよね……それ……どうなのかなってw》
コメント
『これお嬢と同じやつw』
『いのりんも凸されたぞw』
『姫お怒りだぞw』
「あの……本当に怒ってます……よね。すいませんでした……」
《反応がガチなのやめようかw怒ってないけど、かなえちゃんには協力してほしいんだよね?》
「協力?」
《うん。かなフレのみんなにはまだ内緒にしてほしいんだけど、今ね……事務所でさくらちゃんが公式企画のグッズの打ち合わせをしてるんだよ。でもそれ嘘なんだよねw本当の企画は20時からの案件企画でドッキリを仕返そうとしてるんだよねましろ》
コメント
『お、まさか……』
『ましろ姫が仕返す側か』
『これは楽しみw』
《うん。そこでねかなえちゃんには配信のアシスタントとしてましろに協力してほしいんだよね?やっぱり『桜花爛漫』より『姫花』じゃない?》
「かなえにどっちとか選べませんよw」
《え?でもましろの方が先輩だよ?それに、この前さくらちゃんはかなえちゃんに『死神ホテル』やらせようとして、かのんちゃんにヒントあげてたし》
「確かにw」
コメント
『草』
『かなえちゃん。長いものには巻かれろ』
『姫は絶対だからw』
《うんうん。かなフレのみんなは分かってるなぁ。ほらかなえちゃんどうする?》
「え?……そうだよ。さくら先輩はかなえを裏切ろうとしてたし!ましろ先輩、かなえ協力します!」
《うん『姫花』しか勝たん!》
「『姫花』しか勝たん!」
こうしてドッキリのためにかなえちゃんにも協力してもらうことになった。もちろん配信を面白くするためなんだけど、なんか……ドッキリって楽しいなと思ってしまうのだった。