345. 後輩ちゃんは『旅行配信』します
他箱の白鷺ステラさんとの初コラボ配信から1週間。4月下旬。SNSはVパレスプロダクションとFmすたーらいぶのコラボ『Vすたコラボ』の話題で盛り上がっている。
ゴールデンウィークは来週なので気合いをいれないと。そんな中、オレは彩芽ちゃんと共に事務所の会議室にいる。今日は少し前に玲奈ちゃんが話していた『3期生の旅行配信』についての話し合いがある。
偶然にもみんなが大体仕事が入っており、事務所に集まる話しになった。ちなみにオレは『姫宮ましろ』ではなく、『双葉かのん』のマネージャーとして参加する。といってもオレが口を出すことはないと思うけど。そんなことを考えていると彩芽ちゃんが話しかけてくる。
「あの……そ……マネージャーさん」
「ん?どうかしたの?」
「本当に……旅行行くんですか?」
「まぁオレは一緒には回らないけどね。旅館で仕事するつもりだから、彩芽ちゃんはみんなと楽しんできな」
「いいんですか……?なんかワガママのような気がして……」
「気にしないで大丈夫だよ。これも玲奈ちゃんのためだし、オレはオレでゆっくりできそうだしさ?せっかくの旅行なんだから楽しもうよ」
そんな話をしていると、キサラさんがやってくる。そう言えばキサラさんと会うのは1年ぶりくらいじゃないか?初期の頃だけだもんな。
「お疲れ様です。彩芽ちゃんこんにちは」
「あ。こ……こんにちは……」
「お久しぶりです。神崎さん。1年ぶりじゃないですか?最初に事務所でお会いした以来ですね。今回は3期生の旅行配信なのに無理に引き受けて頂いてありがとうございます」
「いえ。気にしないでください。オレで力になれるなら。それに息抜きにもなりますから」
「そうですか。それなら良かったです」
相変わらずお姉さんって感じで緊張するな……そしてキサラさんはそのまま席について、パソコンを開き仕事をし始めるが、すぐにオレの方を向き話しかけてくる。
「あ。そうだ。神崎さん、私は白石莉央って言いますのでよろしくお願いしますね?」
「あっはい。よろしくお願いします白石さん」
キサラさんは白石莉央さんって名前なのか。もしかしてこれで3期生も全員の名前を知ることができたのか。まだ知らない……というより、知らない人はそもそも裏で会ったことない人か。
そしてしばらく待っていると、玲奈ちゃん、衣音ちゃん、愛梨ちゃんとやって来て3期生が全員揃う。……白石さんと愛梨ちゃんはオレのことを『姫宮ましろ』だと知らない人だ。ボロが出ないように気を付けないと。
「お疲れ様。それじゃまずどこに行きたい?それを決めましょうか。行きたいところあるかしら?」
「はいはい!私、調べたんですけど秘境にある温泉旅館があって。少し山登りして、ロープウェイで行くの!春だしそこまで寒くないし、景色も綺麗だし!……JKの玲奈ちゃんは別として私たちVtuberって結構運動不足だしwあと行く途中にフラワーパークもあるんだよね!」
そう言って愛梨ちゃんがスマホの画面を見せてくるが、さすがに見えないのでその画像を送ってもらいスマホで確認する。確かに景色もいいし、旅館も綺麗そうだ。ちょうど良いかもしれないな。
「いいんじゃない?でも、みんな若いのに遊園地とかじゃなくていいのかしら?」
「あの私は……温泉好きなので。卓球やりたいです……」
「修学旅行みたいで私も賛成です。彩芽さん、枕投げもやりましょ!」
「まっ枕?うっうん」
「私は考えるの苦手だから、愛梨ちゃんが行きたいならそこでいいですよ」
と彩芽ちゃん、玲奈ちゃん、衣音ちゃんも賛成している。その後、行きたいところをみんなに確認してもらいながらまとめると、愛梨ちゃんが提案したフラワーパーク➡️山登り➡️ロープウェイで行く秘境の温泉旅館ということになった。
配信内容も旅行中の写真を紹介しながら、3期生全員で雑談をするというものに決まった。もちろん場所を特定されない程度に紹介をするのだが。
「内容はこのくらいかしら。神崎さんは何かありますか?」
「いや。いいと思いますよ。オレは先に麓からロープウェイで旅館に行って、配信の準備をしておきますから」
「え?マネージャーさん……山登りしないんですか?」
「うん。オレはやらないよ」
「颯太さん楽しようとしてますねw」
「神崎マネージャーずるいなぁw」
なんか配信みたいに、玲奈ちゃんと衣音ちゃんに弄られたが……でもオレは今は『姫宮ましろ』じゃないからね?
「いや。みんなの旅行だから。オレは引率だよ?」
「そうよ。神崎さんが迷惑してるでしょ?マネージャーさんに迷惑かけないの」
こうして3期生の旅行配信内容が決まった。日程は5月の11、12日。『Vすたコラボ』の次の週だから、スケジュールがタイトだが頑張ろう。