346. 姫は『アピール』したいそうです
そしてそのままオレは自分の仕事をするために事務所に、彩芽ちゃんは収録でスタジオに向かった。今日は終わる時間がバラバラだから一緒には帰れないか……まぁ仕事なら仕方ないけど、やっぱり寂しいな。
しばらく仕事をして、休憩室に行くとそこにはキサラさんこと白石さんと愛梨ちゃんがお茶を飲んで休憩していた。
「あ。お疲れ様です」
「マネージャーさん!莉央さんのOBS見てください!めっちゃデータがきちんと整理されてるんですよ!」
「これはノートだから。配信用のパソコンはこんな整理してないわよ」
OBSとは簡単に言うと、生配信や録画時の画面上に画像や人物・Vtuberなどを構成して表示させられるソフトだ。つまりオレたちVtuberには必須な配信ソフトだな。オレも結構データが散らかってることが多いけど、白石さんはきちんと整理整頓されている。まぁ性格だよな。きちんとしてそうだし。
「そうだ。神崎さんは何時あがりですか?」
「オレ?17時にはあがるつもりですけど……」
「……良かったら、愛梨ちゃんと夕飯に行くんですけど、一緒にどうですか?旅行配信のお話も煮詰めておきたいですし」
「あ。それいい!マネージャーさんも行きましょう」
食事か……確かにある程度のコミュニケーションは必要だし、正直……3期生で頼れるのはキサラさんこと白石さんだけだもんな。緊張するが、いつまでも壁があるわけにはいかないか。
「いやでも……オレが一緒でいいの?気まずくないですか?」
「そんなことないですよwむしろありがたいです。神崎さんと交流を深めておいた方が……あとあと楽ですから」
そう言ってもらえるのはありがたいな。とりあえず、まずは仕事を片付けるか。そして仕事も終わり、オレは白石さんと愛梨ちゃんに連れられ事務所をあとにする。
彩芽ちゃんにはメッセージを送り『分かりました』と返事が来たので問題ないだろう
「莉央さんどこ行くの?」
「え?あー……神崎さんはラーメンお好きですか?」
「ラーメン?はい。好きですよ」
「近くに魚介系のラーメンが美味しいお店があるんですよ。そこでいいですか?」
「またラーメン?本当に莉央さんラーメン好きだよねw私とご飯行く時2回に1回はラーメンだけどw」
「いいじゃない別にw」
……そう言えば白石さんはラーメン好きだったっけ。玲奈ちゃんの10万人耐久歌枠の時も、配信なのに作って食べたって言ってたし。そして2人に連れてこられたのは、街中にあるオシャレなラーメン店。店内は思ったより人が少なく落ち着いており、きちんと個室になっていた。オレは白石さんおすすめの魚介スープのラーメンを頼み白石さんと愛梨ちゃんと会話をしていく。
「あ。そうだ!あの……マネージャーさん。最近ましろ先輩にお会いしましたか?」
「え?」
「配信か切り抜き観たかもしれないんですけど、この前の凸待ちの時に……私やっちゃって……」
「あー……大丈夫だよ。逆に配信が面白くなったんじゃない?ほらFmすたーらいぶらしくというか。今回はVパレスプロダクションさんとのコラボだったからさ。相手は格上の事務所なのかもしれないけど、でもオレはFmすたーらいぶだって負けてないと思っているし」
「本当ですか?それなら良かった」
「なんか……神崎さんって熱い人なんですね?少し彩芽ちゃんが羨ましいかも。こう……ライバー目線というか、近くで寄り添ってくれているというか。なかなかいないんじゃないですか神崎さんみたいなマネージャーさんは」
オレは白石さんにそう言われて恥ずかしくなる。少し熱く語ってしまった。だが、VパレスプロダクションさんとFmすたーらいぶを比べてしまうと、どうしてもVパレスプロダクションさんが上なのは事実。だからゴールデンウィークの『Vすたコラボ』でFmすたーらいぶの良さをアピールしたいよな。