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362. 姫は『姫』を語るそうです

362. 姫は『姫』を語るそうです




 日咲さんの家で謎の鍋パーティーがおこなわれている。ちなみにメンバーはオレと日咲さん、彩芽ちゃん、衣音ちゃん。そして初めましての夢花かなえちゃんこと桜庭奏さん、皇ジャンヌちゃんこと霧島栄美さんの6人。


 結構大人数だよな……彩芽ちゃん大丈夫かな?まぁ同期の衣音ちゃんもいるから大丈夫か。


「あの七海先輩。お誘いありがとうございます。まさか私も誘われると思わなくてw配信でもほとんど絡んでないですし。それこそ『てぇてぇの解説』した時くらいですし」


「いやあたしも急に誘っちゃってごめんね。4期生の中で2人だけご飯食べたことないからさ?どうかなと思って?そろそろ緊張とけたか奏?」


「お酒が私に力を貸してくれるはずですwでも本当に嬉しい!彩芽先輩と衣音先輩とお話ししたいとずっと思ってたので!ましろ先輩がいないのが残念ですけど」


「奏。でも1番はw」


「え?これ配信じゃないですよ七海先輩w」


 しばらく鍋パーティーが進むと緊張が解けてきたのか、桜庭さんも徐々に喋るようになり楽しそうに話している。彩芽ちゃんと衣音ちゃんの方は霧島さんと話をしている。日咲さんはお酒を飲みながら、嬉しそうにしているみんなを見ている。


 なんかいいな……こういうのも……配信外で話すのも楽しいな。本当にオレは変われたんだな。それが嬉しい。


「あ。マネージャーさん。ビールでいいですか?」


「うん。ありがとう。彩芽ちゃん何食べる?取ってあげるよ」


「あの……お肉……」


「彩芽ちゃんと神崎マネージャー仲良いんですね?羨ましいです」


 少し恥ずかしいが、嬉しいよな。一応彼氏彼女だから。そんなことを考えていると日咲さんが話し出す。


「あっそうだ。衣音お前、今日の相関図の配信、自分のこと好きすぎ!のところにあたし書くなよwあそこは姫だろ!悲しんでたぞ姫w」


「え?」


 その言葉を聞いてオレを見る衣音ちゃんとジト目で見る彩芽ちゃん。まずいよ桜庭さんと霧島さんがいるぞ?そんなことを考えながらその視線を無視してビールを一気に飲み干すと、今度は桜庭さんが話し出す。


「配信……あの……みんなに相談があるんですけど、聞いてもらえますか?」


「奏。お前唐突なんだけどw」


「すいません。でも聞いてほしくて。明日から『Vすたコラボ』あるじゃないですか?その……私は最終日にコラボなんですけど……ましろ先輩とどうやったら上手くやれますかね?失敗したら……怖くて……」


「奏ちゃん。何度かましろ先輩と絡んでなかったっけ?」


「栄美ちゃん。あれは少しだけだから……本当にどうしたらいいか……」


 後輩にとってもやはり『姫宮ましろ』はエースだからな……そんなに緊張することもないんだけだな。とは言っても仕方ないのかもしれないけど。


「後輩の悩みだもんね。あたしは同期だし、参考にならないから。衣音と彩芽ちゃん答えてやってよ?」


「え?私ですか?私は……いつも流れに乗ってるだけですよ。姫先輩が勝手に面白くしてくれますから」


「ましろん先輩は……ただのお喋り……だから。振ってきたことに答えれば大丈夫……です。肯定しても、否定しても……はい」


「あはは。姫可哀想w」


 笑い事じゃないんだよ。ここに『姫宮ましろ』がいるからね?あと彩芽ちゃん、ただのお喋りって悪口じゃないかそれ?


「あれ?彩芽先輩の推しじゃなかったんでしたっけましろ先輩って……結構辛辣なんですねw」


「そうだ。颯太もアドバイスしてあげたら?この中なら誰よりも姫のこと詳しいよね?ねっ彩芽ちゃん?衣音?w」


「え?あの……その……」


「ちょっと!七海さん酔ってるんですかw」


「うん。みんなで鍋パーティーして、楽しくてなんか色々言っちゃいそうw」


「あのましろ先輩のこと詳しいなら、些細なことでもいいので教えてください!」


 わざとだろこれ……そんなにオレをイジメて楽しいか?でも桜庭さんは真剣な眼差しをオレに向けているし……オレが『姫宮ましろ』を語るのもどうかと思うが仕方ない。後輩のためだと割りきるしかない。


「えっと……まず桜庭さん。姫宮ましろは先輩であるけど、夢花かなえと同じFmすたーらいぶのライバーであって、そこに優劣はないと思いますよ。先輩、同期、これから来るであろう後輩……その全員とコラボする時は同じようにやらなきゃいけない。だから誰とコラボだからって言う考えは今後やめた方がいいと思いますよ?それは自分の中で線引きをしてしまっているし、相手にも失礼ですから」


「そう……ですよね……」


「あと、彩芽ちゃんや衣音ちゃんは知ってるかもしれないけど、姫宮ましろが良く言ってるのは『いくら準備しても失敗する時は失敗する。大事なのは楽しめるかどうか』姫宮ましろは配信を楽しむためにその場の流れで色々やっているだけであって、桜庭さんには桜庭さんの考えがあるのだから、気にしないで大丈夫だから。もし上手くやれなかったら、それは自分のせいじゃなく、配信に参加しているみんなのせいなんだから」


 オレがそう語ると、なぜかみんな頷く。あれ?なんかおかしなこと言ったか?すると桜庭さんが少し目に涙を浮かべながら言う。


「なんか……感動しちゃいました……なんかやる気出ました!」


「良かったね奏ちゃん。あの神崎さんってすごいライバーさん目線ですね。ライバーの誰よりもライバーというか……さすがマネージャーさんですね。私も今の言葉すごいって思います」


「うっうん。ありがとう……」


「よし!ご褒美にビールをやろう颯太w乾杯しよw」


「日咲さんはもう飲むなよw」


 そのあとも謎の鍋パーティーは続き、オレは初めて裏で同期以外のメンバーと親睦を深めたのだった。日咲さんの無茶振りとか色々あったが、彩芽ちゃんも楽しんでいたし、いい機会だったかもしれないな。

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