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382. 姫は『聞かなかった』ことにするそうです

382. 姫は『聞かなかった』ことにするそうです




 オレは今3期生の旅行配信のために同行し、旅館で高坂さんと打ち合わせをしている。みんなの様子は定期的にSNSに投稿されているので、今はチェックするだけだ。


「それじゃ今回のオリジナル曲もAMEさんにお願いするということで大丈夫ですか?」


「うん。やっぱり色々考えたけど、AMEさんかなって。今回も歌いやすい曲調であまり可愛くない歌詞が希望だな」


「歌詞ですか?」


「ほら、オレは男だし可愛らしい歌詞は極力歌いたくないというか……」


 まぁこれくらいワガママは言わせてほしい。一応仕事だからもし希望が通らなくてもやるけどさ。


「そう言えば『姫宮ましろ』で新しいオリジナル曲出すのって3年ぶりですよね?」


「そうだな。一応今年の『すたフェス』は新しいオリジナル曲でやろうって1期生と年始に話してるからさ。それに昨年はまだ、彩芽ちゃんしかオレが『姫宮ましろ』だって知らなかったし、今回は新しいユニットを組みたいと思ってるんだ」


「ユニット……あのそれって私が推薦とかするんですか?」


「基本は配信やらコラボやらリスナーの反応やらで事務所が決めるけど、ライバーの意向はマネージャーが伝えるよ。ユニット誰とがいいと思う?」


「そうですね……個人的にはポアロさんとの『ましポア』ですかね?なんか仲良し姉妹みたいで好きです。あとは最近絡みの多い『あるましろ』、もちろん『ましのん』もいいと思います!」


「なるほどね。ありがとう参考にするよ」


 そんな打ち合わせをしつつ、色々やっていると時間は16時を回る。そして3期生たちが山登りを終え旅館にやってくる。


「あ~疲れた~もう足がパンパンだよぉ。誰山登りしようって言ってたの?」


「愛梨さんですよ。私は楽しかったです!これから配信もありますし!」


「玲奈ちゃん……若い子は元気でいいわね……私も疲れたわよ……」


「莉央さん頑張りましょう。配信終わったら美味しいご飯と温泉が待ってますから!」


「マネージャーさん。みんな揃ってます。問題ありませんでした」


「うん。お疲れ様。配信は19時からだからそれまでゆっくりして。一応食事は配信後の21時からで、ちなみに温泉はもう入っても大丈夫みたいだよ」


 オレがそう伝えると、みんなテンションが上がり嬉しそうにする。


「あの皆さん、その前に配信で使う写真のデータをください。事務所に確認しますので」


「分かりました。みんな先にデータを送って。温泉とか休むのはその後よ」


 白石さんがみんなに声をかけ、全員のデータを集めてくれる。やっぱり頼りになるよな。オレと高坂さんはそのまま作業をする。


「ねぇ衣音ちゃん。一緒に温泉行こ?」


「嫌だよwなんで愛梨ちゃんいつも私とお風呂入りたがるの?」


「いいじゃん!あ。莉央さんも入りますよね?疲れてますもんね!」


「いや私は寝る前に入るわ。ほら……みんなみたいに若くないから化粧落ちちゃうの嫌だし、配信の台本も確認しないと」


「そう……ですよね……」


 なんか可哀想だな愛梨ちゃん……そんなやり取りを見ていると彩芽ちゃんが話し出す。


「あ。……私、温泉入りたいです。愛梨ちゃん……一緒に行ってもいい?」


「うん!行こう!温泉出たら卓球台あったから卓球もやろう!」


「卓球……やります」


「2人とも準備があるから、18時には戻ってくるのよ?」


 そう言って彩芽ちゃんと愛梨ちゃんは温泉に行く。なんか彩芽ちゃんの優しさが見れて嬉しい気持ちになるな。ただ、本当に温泉に入りたかったのかもしれないけど。


「玲奈ちゃんは入らないの?」


「私も寝る前に入ろうかなって。莉央さん、衣音さん一緒に入ります?」


「ええそうしようかしら。なんか若い女の子と一緒に入ると若返れる気がするわねw」


「莉央さんは全然若いですよ!」


「私……あんまり裸見られるの好きじゃないんだよね。ほらあまりスタイル良くないし……恥ずかしいというか……」


 ……確かに衣音ちゃんは胸は小さいほうだよな。コンプレックスなのかもな。衣音ちゃんは色々気にしちゃう子だしな。いや違うよ?胸の大きさとかで人を判断とかしてないよ?


「うーん……そんなことないと思いますけど?」


「そうよ衣音ちゃん。別に貧乳ってわけでもないじゃない?」


「いや……2人は大きいじゃん……玲奈ちゃんと莉央さんには分からない悩みじゃん」


「確かに最近の子は発育がいいわよね?」


「え?でも、クラスメートにはもっと大きい子もいますし。私は普通くらいですよ?」


「玲奈ちゃんが普通なら私はどうしたらいいの……?」


 ……というか、オレが部屋にいるの忘れられてる?これが女子の会話なのか?聞いちゃいけない会話を聞いてしまってないか?聞かなかったことにしよう……


 そして時間は18時40分。温泉に行っていた彩芽ちゃんと愛梨ちゃんも合流して最終打ち合わせを終えて待機している。打ち合わせ中の白石さんはやはり3期生のお姉さんで色々指示をしていた。


「私が真ん中でいいわね。右側……彩芽ちゃんは声小さいから私の隣でその隣が玲奈ちゃん」


「分かりました」


「はい!」


「あるココ……衣音ちゃんと愛梨ちゃんはどうせわちゃわちゃするから左側ね」


「それは愛梨ちゃん次第ですから莉央さん」


「そんなことないよ!いつも衣音ちゃんが悪いんだよ!」


 と。いつものようにクソガキ感満載でやり取りし始める2人。少し離れた場所にオレや高坂さん、スタッフさんはいる。ふと高坂さんを見ると手帳を持って試聴する気満々だ。こうして間近で3期生の配信を観るのは初めてだから楽しみだな。

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