388. 姫は『フォロー』するようです
そして週末。今日は4期生の初晩酌オフコラボ配信の日だ。配信タイトルは『今日は語らせてください!今だから言える4期生初晩酌オフコラボ』実は最近4期生の『不仲説』がプチ炎上しており、みんなで話し合ってそれを払拭するためのものらしい。
実際のところ4期生はお互いコラボが少ない。もちろんそれは理由がある。まず、『司会役がいない』こと。配信を回す立ち回りの役目が決まっていないので集まる機会がない。それと『得意な配信ジャンルに偏りがある』こと。例えば夢花かなえちゃんの枠で歌枠コラボをしても、他の4期生に需要があるわけじゃない。
それと、『3期生と比べられている』こと。これは運営の方針にも問題があるが、4期生のコラボ解禁が早かったので、配信に慣れるまでの同期の配信が少なくなってしまった。でも先輩とのコラボの早期実現やチャンネル登録者の増加はしているので、これはどっちもどっちではあるけど。
まぁつまり同期の箱の色が違うので仕方ない。4期生には4期生の色があるのだ。といってもそんな疑惑がある以上、仕事なのでやるしかない。あともちろん、4期生が仲が悪いわけではない。
ということで、オレと高坂さんは4期生が集まって配信をする一ノ瀬さんの家に向かっている。
「えっ!?私がピッキングですか!?」
「うん。素晴らしい能力があるんだからやってくれないか?4期生はしっかりしてるけど、まだ配信1年目だから。それにそんなに流れが止まることはないから、もしかしたら1度もやらなくて済むこともあるし」
「分かりました。やってみます」
「それにしても、不仲説か。オレも出ていたから他人事じゃないんだけど」
「そういう話題はこういう配信業にはつきものですから。でも4期生の皆さんは事務所で会うと仲良しなんですけどね」
「それを歌枠やゲーム配信前の雑談で軽くしか話せないのが問題なんだろうな」
その現状が知られていないから尚更不仲説が加速してしまうんだろう。
「一生懸命やっているのに辛いですね?」
「……それを誰かが話してくれるなら少しはこういう噂もなくなると思いませんか高坂さん?」
「え?」
「いや、事務所の内情やライバーさんの裏の様子なんかを知りたいリスナーって多いんじゃないかなってさ」
「そっそうですね……」
そんなことを話しながら一ノ瀬さんの家に到着してインターフォンを押すとドタドタと足音が聞こえる。すると扉がガチャッと開き、一ノ瀬さんが出迎えてくれる。
「あ。神崎マネージャーお久しぶりです。『海の迷宮』以来ですよね?」
「そうですね。一ノ瀬さんも元気そうで良かったです」
「陽葵ちゃんは昨日ぶりですね?どうぞ中に、みんなは18時ぐらいに来ますのでよろしぐお願いします」
……なんか一ノ瀬さんの訛り久しぶりだな。懐かしささえ感じるよ。そんなことを思いながら、オレたちは一ノ瀬さんの家に入り配信の準備をする。
「今日は引き受けてくれてありがとうございます!神崎マネージャー、陽葵ちゃん」
「いや一ノ瀬さんのマネージャーさんが仕事ができる人だから。こっちこそごめん」
「いえいえ。神崎マネージャーには同じライバーという強みがありますがら!気にしないでください!逆に助かります!」
「ありがとう。とりあえず高坂さんにピッキングをやってもらうから」
「よろしくお願いします!」
そのあとは他の4期生もやってきて、打ち合わせをする。問題の不仲説に関しては冒頭からあえて触れていくことになった。
「凛花さんのお部屋……なんか緊張するw」
「わかる!めっちゃお姉さん感あるよね!」
「え?私の部屋なんてなぁ~んも女の子らしいものないですよ奏ちゃん、明日香ちゃん。栄美ちゃんの部屋の方が女の子っぽいんじゃないですか?」
「私の部屋は今散らかってるからwでもこうやって裏で4人集まるのって御披露目配信の時以来だよね?そりゃ不仲説も出ちゃうかw」
「笑い事じゃないけど、今日はアタシたちの仲の良さを存分にアピールして不仲説なんて吹き飛ばしちゃおう!結構テンション上がってるからアタシ!」
「明日香ちゃんはいつも元気ですね。さすがFmすたーらいぶの応援団長です!」
やはり同期だからな。特別な信頼感があるし、リラックスしているようだ。これなら問題はなさそうだよな。