511. 姫は『嬉しくなった』そうです
七森さんとの出会いからドッキリをして更にオフコラボをしてから1週間。9月中旬。季節もすっかり秋に向かっており、夏の暑さもだいぶ落ち着いてきた。
オレは今、自宅のリビングで高坂さんとスケジュールなどの打ち合わせをしている。
「はい。コーヒー」
「ありがとうございます」
「高坂さんがデビューして1ヶ月半か……早いな」
「はい。公式企画の配信も少しずつやらせてもらって。本当にありがたいです!」
そう言って高坂さんは嬉しそうに笑う。確かにデビュー1ヶ月半でここまで順調なのは凄いことだ。高坂さんがデビューしてから、徐々にチャンネル登録者数も増えており、つい先日5期生全員が無事に収益化の審査を通過した。
昔ならこんなに早く収益化するのは考えられないけどな。昨今のVtuber人気の高さが伺える。事務所としても大手からの案件も貰えているしな。
「そう言えば神崎先輩。5期生のLINEは登録してもらえました?」
「あっうん。ありがとう」
オレは直接会えないから、LINEでのやりとりはすることないと思うけど。一応全員と友だち登録をさせてもらった。まぁ基本ディスコードがあるから、そっちを使うことが多いけどな。
「早速なんですけど、明日の土曜日はFmすたーらいぶのライバーは全員配信を休む日です」
「あー……なんかそんな連絡来てたな」
「これは会社の方針でして、春と秋にもお休みを作るというものです。あといつも配信スケジュールを確認できるアプリもメンテナンスします」
「と言っても雑務はやるだろうけどw」
「それは皆さんの自由ですから。あと、姫宮ましろのオリジナル曲の『ホワイトプリンセス』の歌ってみた動画の許可と歌唱の依頼がきてますけど、金額とかどうしますか?」
「そうなんだ。無償でいいよ。別にお金が欲しいわけじゃないし、動画作成はそちら持ちだろうから」
基本歌ってみたの許可は、事務所持ちであるがFmすたーらいぶは個人曲は個人の判断でやり取りする方針だ。
まぁ本来はお金をもらったほうがいいのだろうが、オレは別に歌が人気のライバーでもないし、逆に歌ってみた動画を出してもらったほうが自分のチャンネルの動画の再生回数が伸びるから好都合だ。絶対オリジナルを観たい人が多いからな。
「もう3年くらい経つけど歌いたい人いるんだなw」
「はい!聞いて驚かないでくださいね神崎先輩?この依頼はあの『Make world!』の雛山あかりさんからなんです!」
「え?」
「他箱のトップから依頼されるなんてやっぱり『姫宮ましろ』はすごいですね!尊敬します!」
……マジ?それは……プレッシャーが半端ないんだが。しかも、歌が上手い『Make world!』の雛山あかりさんだろ?何でよりにもよってオレの曲なの?えぇ……マジか。どうしよう。
「じゃあその旨を伝えておきますので個人的にやり取りしてください」
「うっうん……」
「あとは……秋の公式企画の組み合わせ発表が来週あります。神崎先輩は配信参加がないので、配信視聴か配信後のディスコードを確認してください。それと冬に販売するボイスの収録をお願いします。台本はディスコードに送っておきます。提出は10月にお願いしますね」
「分かった」
「それと、神崎先輩の例の企画なんですが……もう少し時間をください。やっぱり事務所としても炎上のリスクもありますし、慎重に検討したいらしいです」
「まぁ……少なからず良く思わない人はいると思うよ?でもこれは『姫宮ましろ』にとってもプラスになることだからさ。いい返事を期待してるよ」
そんな感じで打ち合わせをしていく。オレはライバーとしてもマネージャーとしても高坂さんの先輩だ。それにこれはオレが勝手に思っているだけだが、高坂さんをVtuberにしたのはオレだからな……間近で成長していく高坂さんの姿を見れてなんか嬉しくなったのだった。