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561. 姫は『任される』そうです

561. 姫は『任される』そうです





 そして事務所に戻り色々打ち合わせやら会議やらをこなして、時間は18時。そろそろ帰ろうと書類を整理していると、突然桃姉さんに呼ばれる。


「神崎マネージャー、高坂マネージャー、ちょっと第3会議室に来てくれる?」


 突然の桃姉さんの呼び出しにオレは驚きながらもその会議室に向かう。しかも高坂さんも一緒なのか……そして部屋に入ると、そこには星乃社長や人事部長、経営企画の責任者やグッズ担当の武山さんまでいる。


 ……なんだ?すごい大事の予感しかしないんだが……


 会議室には全員が揃っており、高坂さんとオレは桃姉さんに席に座るよう言われ座る。すると扉が開き立花さんが入ってくる。


「お疲れ様です……」


「え?立花さん?」


「座って。揃ったわね。それじゃ早速始めていくわね」


 星乃社長はそう言い、桃姉さんがある企画書を配っていく。そこには『FmすたーらいぶCGSプロジェクト』と書かれている。なんだこれ?


「まず初めに弟君。あなたがやりたかった企画あるわよね?個人勢のVtuberに凸をするだったかしら?」


「はい」


「……事務所としても色々考えた結果、申し訳ないけど今回は見送ってもらうことにしたわ。今のV業界を盛り上げる企画として素晴らしいと思うわ。でも……今の『姫宮ましろ』は大きくなりすぎたわ。単純な理由として私たちはあなたを守ることは出来ても、相手のVtuberさんを守ることが出来ない。『姫宮ましろ』とコラボをすれば間違いなく売名行為と捉えるリスナーもいるはず。だから理解してほしいわ」


 それはもっともな話だ。そんな炎上とかでそのライバーさんの未来は潰せないしな。


「だから、事務所としてその企画をやらせてもらえないかしら?」


「……それがこの『FmすたーらいぶCGSプロジェクト』ということですか?」


「そうよ。今回の6期生はこのCGSプロジェクトから3人加入させるわ。そして応募要項は『個人勢』であること『FmすたーらいぶCGSプロジェクト』CGS(Cinderella GemStone )の文字。直訳:シンデレラの原石。すでにVtuberとして活動している個人勢から3名。FmすたーらいぶCGSとしてデビューさせるプロデュースプロジェクト。来年の夏の『すたフェス』でシルエット御披露目の予定。そしてその人選を弟君、立花さんあなたたちにお願いしたいのよ」


「えっ!?オレと立花さんですか!?」


「あのお言葉ですが私はそんな大それたことを出来る自信は……」


 いきなり無茶苦茶なこと言われたぞ?でも星乃社長は至って真面目な顔をしている。本当にこの人は……


「あなたたちはこのFmすたーらいぶのトップVtuberよ。今のFmすたーらいぶに足りないもの……それをライバー目線で考えれるのはあなたたちしかいない。それだけあなたたちに期待してるのよ?」


 ……星乃社長の言ってることも分かる。確かに今のFmすたーらいぶには足りないものがたくさんあるだろう。でも、人選なんてオレや立花さんでは力不足な気がするが?


「このCGSプロジェクトは公式配信で大々的に告知をする。その宣伝担当は高坂さん。あなたにお願いするわ」


「え!?私ですか……」


「ええ。これは会社として新しい挑戦よ?話題性もある。重要な役割ではあるけど、高坂さんならできると私は信じているわ。あなたは公式Vtuberだもの」


「は……はい!私頑張ります!」


 そのあとは色々説明を受け、詳しい詳細は後日となった。そのまま会議は終わり会議室にはオレと立花さんが残っている。


「なんか大変なことになりましたね?」


「そうね……まさか人事まで任されることになるなんて。本当に社長は何考えてるのかしらね?……とか言ってもあの人の真意なんて分からないけど」


「立花さん。あの断っても大丈夫ですよ?元々はオレが考えていた企画ですから」


「だったら尚更断らないわよ。面白いじゃない。私と颯太が選んだ個人勢のVtuberがFmすたーらいぶに加入して、いつか私たちを追い越しに来るんでしょ?」


「え?立花さん楽しんでるんですか?」


「楽しまなきゃ損でしょ。それにね……こういうシンデレラストーリーって、ドラマでも物語でも好きなのよね」


 立花さんらしいな。この人は元々エンターテイナーだし、こんな面白そうな企画を断る人じゃないか。


 こうして『FmすたーらいぶCGSプロジェクト』が始動するのだった。夏と言ってもあと半年だからな……忙しくなるな。

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