586. 『Vの軌跡』ネット番組対談配信③
「そして記憶にまだ新しい5期生が今年の8月に加入しましたね。確かコンセプトは『新しい風』。初めての公式Vtuberも話題になりましたよね?」
「話題になったのはありがたいことですね。でもあれは結果論で、それまでに色々なことはありました」
「ちなみにその公式Vtuber『星影つむぎ』さんは、ましろさんのマネージャーさんなんですよね?」
《そうです。新人ちゃんで可愛い女の子ですよ》
「星乃社長。その色々なこと……聞いてもよろしいですか?」
「はい。当初5期生はすでに採用が決まっていた3人でデビューさせるか、もう1人採用できる人材が来るまでオーディションをするか迷っていました。そしてそこにたまたま新人スタッフの社員がVtuberになりたいと聞くんですね?」
聞いたと言うより偶然居合わせたような気もするが、確かにあの時星乃社長と会わなかったら高坂さんは公式Vtuberにはなれなかったのかもしれない。
「なるほど。それでその社員さんを公式Vtuberに」
「いえ。彼女はしっかり公平に5期生の面接は行いました。結果は不合格。コンセプトの『新しい風』には合わなかったんです」
「そうなんですか?ではなぜそれが公式Vtuberという選択に?」
「その時には、公式Vtuberプロジェクトの発案はありましたが、2年後くらいの気持ちで考えていました。しかし、面接をして彼女の『光るもの』が公式Vtuberという形が合っていた。そう考えた時に、このチャンスを逃す手はないなと。かなり見切り発車でした、しかも彼女は配信素人。なので5期生としてデビューさせることで周りからのフォローを貰える環境にしました。実際に姫宮ましろのマネージャーをすることでライバーとしてのフォローもしてもらってますからね?」
……あまりしてないかも。正直、高坂さんは『瞬間記憶能力』もあってコメント欄を拾う能力はオレよりもあるし、彼女自身が努力家だもんな……
「5期生のコンセプトは『新しい風』。初めて配信経験者をメインに採用しました。Vtuberの基本配信の内容をより高め、新たなユニットを作る目的がありました。そのために今年は夏の長時間配信からコラボを解禁させ、世間に周知をしました。現在では様々なコンテンツを自主的に展開して反響も大きいです」
「確かにそうですね。ゲームを通じた他箱のコラボやショート動画なども増えてますしね。ちなみにこんな質問も来ています。『いきなり新人にトップVtuberのマネージャーは大変じゃないのか?』って世間の声はあるみたいですねwこちらはましろさん実際はどうでしょうか?」
《まずどのマネージャーさんも大変というのを前提で考えた時に、ましろのマネージャーは比較的まだ楽なんじゃないですかねw》
「えっ?それは意外です。お忙しいというのが世間の印象ですけど……?」
《ましろは基本は雑談配信をしてます。これは特に何の許可もいらないです。例えば歌枠をやる場合は、オケの準備、更にその歌う曲が許可が出てるのか確認が必要です。ゲームも同じですかね?あとは長時間配信するライバーさんだと起きてないといけないこともありますしwその点を考えれば、比較的楽だと思いますよw》
《ましろ先輩は朝早いことくらいですよねw》
《そうだねw》
そんな感じで番組は続いていき、ついに2時間という枠もエンディングを迎えることになる。本当に改めて色々社長から聞けて良かったな。真面目な対談番組だから少し緊張していたが無事に終わって良かった。
「さて、そろそろ配信も終わりの時間となりましたね。今日は本当に色々なお話を聞けてありがとうございました」
「いえ。これからのVtuber業界を盛り上げるためにこちらとしても良い機会でしたので。最後にうちの姫宮ましろから話したいことがあるので……よろしいでしょうか?」
《え?》
「はい。どうぞ」
何が?いやいや何も聞いてないんだが。無茶振りにもほどがあるだろ……どうしたらいいんだよ。オレが焦っていると、高坂さんからディスコードに通知がくる。そこには『FmすたーらいぶCGSプロジェクト』の件お願いします!と書かれており、告知の文面が送られてきた。
……本当にこの人は……飄々としてるよ。
《この場を借りてFmすたーらいぶから重大な告知があります。この配信後、公式サイトに……6期生のオーディション内容が発表されます!今回は『FmすたーらいぶCGS』としまして、CGS(Cinderella GemStone )の文字。直訳:シンデレラの原石。すでにVtuberとして活動している個人勢のVtuberさんから、これからのVtuber業界を盛り上げていく原石を探したいと思います。ましろたちとFmすたーらいぶを盛り上げたいと思っている個人勢の皆さん。ご応募お待ちしていますね!》
「個人勢ですか……すごい告知ですね?」
「私はVtuberには優劣はないと思っています。例えばチャンネル登録者10名のVtuberがいたとします。そのファンの10名は姫宮ましろの配信を観てチャンネル登録をするのか……全員ではないと思いますし、誰も登録しないかもしれない。それはそのファンの人に配信が『面白い、また観たい、応援したい』そう思わせるかどうか……個人勢にも必ず光るものを持っている人がいる。だからこそ今回は個人勢から募集をすることにしました。ぜひご応募お待ちしています」
と最後にとんでもない爆弾を投下する。まさかこんな形で発表するとは……でもこれも『Fmすたーらいぶ』らしいといえばらしいか。