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596. 姫は『また焦る』ようです

596. 姫は『また焦る』ようです




 オレは映画の告知案件という嘘の収録から、おそらく『さくつむ』のドッキリ企画らしきものに参加することになった。


「新しいスタジオだからおかしいと思ったんだよねw」


「ちなみにましろ先輩。最近おかしいことなかったかい?」


 はいはい。LINEの件だろ。まぁここはバラエティーらしい反応をしておくのが無難だろうな。ないとは思うけど万が一違ったら大事故になるからな。


「え?特におかしいことなかったけど?」


「本当ですか姫様?」


「なになに!?怖いんだけどw」


「まぁとりあえず、今回はましろ先輩だけじゃないから、他の参加者が来るまで待っててな」


 そしてしばらくするとスタジオにライバーが入ってくる。


「お疲れ様です……は?」


「お疲れお嬢w」


「は?まくら?つむぎさん?何これ」


「クララ様。とりあえずこちらの席にw」


「お~い!やってんなこれ!」


「クララちゃん。今回はましろも被害者だからね?」


 なるほど。内容はわからないけど色々なライバーさんにドッキリを仕掛けてるということらしい。


「ちなみにお嬢さ、最近おかしいことなかった?」


「おかしいこと……あ。あれかしらwお前やってんなwしかもあれをましろ先輩にも?」


「まだ言うなよなwちなみにドッキリ内容はみんな違うからw」


「そうなんですのね」


「まぁまぁ。あと1人いるから揃うまで待っててくれな」


 ……一体なんのドッキリされたんだろう。気になるな。そしてしばらくすると誰か入ってきたようだ。


「お疲れ様です。え……お疲れ様でしたw」


「あっ待ってくださいあると様w」


「嫌だ!これ先週見たもん!嘘でしょ!?またなんかやられたのあると!?」


「あると。とりあえずそこの席に座ってなw」


「もう嫌なんだけどwあれ?姫先輩とお嬢先輩もこっち側ですか?」


「うんw」


 と、全員揃ったところで企画配信が始まる。内容は『裏でこんなことしてました!ドッキリ選手権』というもので、オレとクララちゃん、あるとちゃんにこっそりドッキリを仕掛けていたというもの。


 企画配信が進み、色々な軽度なドッキリを仕掛けられていたり、大掛かりなドッキリを仕掛けられていたりと展開していく。


 そして収録が1時間半くらいすぎるが、一向にオレへのドッキリが発表されない。まぁかなりのヘビーな内容だから、最後なのかもな。


「えっと……ドッキリは以上ですね」


「ちなみにどうだった?」


「もう2度と仕掛けんなw」


「そうですよ!あるとたちも暇じゃないんですから!」


 と話しているみんな。待て待て……オレのドッキリは……?


「ちょっと待って!あれ?ましろへのドッキリは?」


「あー……ないよw」


「え?」


「姫様にはドッキリしてないドッキリですw気づかれてました?」


「というか……なんかおもい当たることでもあったのかいましろ先輩?」


「え?ないけど。だよね!おかしいと思ってたんだよ!考えても何もないしさ?」


 ……ということは、あのLINEはガチのやつ?マジか……オレはその事実に内心驚愕しながらも平静を装う。そのまま収録は終わり、そのままスタジオを後にした。


 そして家に着き、風呂やご飯を済ませたあと、ゆっくりと考え始める。


 ……マジか。みるく先生のあのLINEはガチだったのか?え?これどうしたらいいの?どうすればいいのか誰か教えてくれ……


 いやさすがにマズイよな。これって他の人に言ってないことをオレだけが知っているという状態だよな?いやどうするべきなんだオレは……そんなこんなで色々悩んだのだが答えは出ないままだ。


 するとディスコードに通話がかかってくる。相手は牛谷みるくさんからだ。オレはすぐにパソコンを起動して通話に出ることにする。


「あ。もしもし?」


 《お疲れ様です。すいません突然通話してしまって。今お時間大丈夫ですか?》


「うん。大丈夫だよ」


 《すぐに連絡するべきだったんですけど……そのLINEの件なんですけど……ましろ先輩は内容って見ました?》


 まぁそうだよな。見たことは正直に話したほうがいいよな。嘘をついても仕方ないしな。


「うん。見ちゃったかな」


 《ですよね。その……その事を誰かに話したりしました?》


「いや、さすがに誰にも言ってないかな」


 《そうなんですね。良かったです……》


「えっと……あのみるく先生?一応さ、今回はましろだったけど気をつけたほうがいいよ。誤爆とかで色々問題になっちゃうからさ」


 《はい。すいませんでした》


「まぁ……色々大変だと思うけど、ましろが助けられることがあったらいつでも頼ってね」


 《ありがとうございます。ましろ先輩》


 そして通話は終わる。オレはそのままパソコンの電源を落とし、ベッドに横になる。まさかみるく先生があんな内容を送ってくるとは思わなかったな。


 ……でもこれで良かったんだよな?色々大変なこともあるけど、この『Vtuber』という仕事はみるく先生が自分が選んだものだから。こうして色々なことを抱えながら頑張っているんだもんな……オレも頑張らないとな。そう自分に言い聞かせながらオレは眠りにつくことにした。

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