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595. 姫は『安堵』するようです

595. 姫は『安堵』するようです




 そして時間は16時すぎ、高坂さんがオレの家にやってくる。


「すいません。少し遅れてしまって」


「ううん。大丈夫だよ。コーヒーどうぞ」


「あ。いただきます」


 高坂さんはオレが淹れたコーヒーを一口飲み、鞄の中から手帳を取り出す。


 ……その様子を見ながら、先ほどからどうしても気になっているみるく先生のLINEの件を話してしまうか悩む。しかもどうやって聞けばいいんだろうか。


 さすがの雑談配信が得意なおしゃべりモンスターこと『姫宮ましろ』でも、無理があるぞ。そんなことを考えていると不思議そうに高坂さんがオレを見る。すると、その視線に気付いたのか高坂さんは先に口を開いた。


「え?私何か変ですか?」


「いやそんなことはないよ。その……高坂さんがマネージャーになってもう半年経つんだなぁって。しかも5期生になって3ヶ月。マネージャーとライバーの二足のわらじは大変だろ?」


「そうですね。でも神崎先輩も同じじゃないですか。私なんてまだ至らぬところも多いですし、もっと頑張らないと!」


「高坂さんは……5期生とはどう?仲良くやれてる?」


「仲良くやれてると思います。ただ私は皆さんとは仕事内容が違いますから、それにお忙しいですし。プライベートではまだお出かけしたり、ご飯を食べたりしたことありませんけどw」


 ……何やってんだよオレ。高坂さんがこんなに頑張ってくれているんだから、オレがこんな調子でどうするんだ。もうさっきのみるく先生のLINEの件は忘れよう。


 そのまま仕事の打ち合わせを進めていく。内容は来月の『クリスマス』やら『すたライ』の件がメインだ。そう考えるともう今年も残りわずかなんだな。


 その後は高坂さんの『星影つむぎ』の仕事の話や、雑談配信でこんなことをしてみたいと高坂さんが楽しく話してくれる。そろそろお暇する時間になり、オレは玄関まで見送ることに。


 すると高坂さんは靴を履きながら、またオレを見る。そして何かを思い出したかのように口を開いた。


「あ!すいません!大事なこと忘れてました。明後日の18時なんですけど、事務所から少し離れたところに出来た、新しい収録スタジオ分かりますか?そこで案件の撮影があります」


「案件?」


「はい。映画の告知案件なんですけど、すいません忘れてました……」


「気にしないで。新しいスタジオのほうね?分かったよ」


 オレはそのまま高坂さんを見送り、その日の打ち合わせは終了した。


 そして2日後。オレは映画の告知案件のために、Fmすたーらいぶの新スタジオに行くことにする。


 スタジオに着くとすでに撮影スタッフは到着しており、オレは挨拶をする。そしてそのまま控え室に案内してもらい、打ち合わせをする。今春に公開する映画の告知らしい。撮影の時間まで待機することにする。


 オレはスマホを見ながら、撮影スタッフの話に耳を傾ける。この映画は恋愛モノらしいが、内容はリアルとネットの融合で『ガチ恋』がメインの映画になるらしい。


 時間が来たのでオレは撮影スタジオに向かうことにする。


「あー……あー……声大丈夫ですか?」


 《はい。きちんと『姫宮ましろ』になってます問題ありません》


 それを聞いてそのまま中に入る。


「宜しくお願いしま……え?」


「お疲れ様です姫様w」


「おう!ましろ先輩お疲れ様w」


「え……さくつむ……え?待って……何?……これやられた!?」


「とりあえずこちらの席にどうぞ」


「うわぁドッキリ?なんだろう……」


 と言いつつもオレはつむぎちゃんに言われるまま席につく。ということはドッキリ企画ということなんだろうな。なるほど……あのみるく先生のLINEもこのための布石か。良かった……とりあえず安心した。

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