601. 姫は『論外』らしいです
11月下旬。来月からは本格的に忙しくなるので、事前に会議やらミーティングやらがこの時期は多くなる。そんな中、オレはミーティングをするために事務所の会議室へ来ていた。今から年末のすたライについてのミーティングをする予定だ。
ちなみに、今日はミーティング三昧でこの後は新企画の打ち合わせが入っている。
オレがパソコンで仕事をしていると日咲さんがやってくる。
「お疲れ颯太」
「お疲れ様。コーヒー飲む?」
「うん。ありがと」
日咲さんと会うのは月城さんの活動休止を聞いた時以来か。配信でも最近は絡んでないしな。
コーヒーを淹れつつ、資料に目を通している日咲さんを見る。……日咲さんなんか……大人っぽくなってないか?いや、元から大人なんだけど。前よりもなんか……こう……
日咲さんはコーヒーを飲みながら資料に目を通している。……うん。やっぱり大人っぽくなってるな!なんだ?化粧変えたのか?とオレが日咲さんを見ていると、日咲さんがオレをジト目で見てくる。
「なに?」
「いや……大人っぽくなったなって……」
「何それw褒めてる?」
「しばらく会わないと変わるもんだなぁってさ?」
「は?先月会ったじゃんwあたしの魅力に今更気づいたの?ダメだなぁ颯太は。男として論外だね?」
「論外は言い過ぎだろ!」
そんなやり取りをしているとそこにタイミング良く立花さんと高坂さんが入ってくる。
「あ。ましポアてぇてぇ?本当にあなたたち仲良いわねw」
「いやいやどこが!?颯太があたしのこと可愛いって言ったから」
「可愛いなんて言ってないだろ!大人っぽくなったって言っただけで」
「女の子に大人っぽくなったは可愛いと同義だから。覚えておいたほうがいいよ颯太」
「え。そうなのか?」
「はいはい。ミーティングやるわよ?陽葵お願い」
「はい。皆さん席に座ってください」
と高坂さんがホワイトボードを持ってきて、今回のミーティングの議題を書く。なんで高坂さんがいるかは彼女が『姫宮ましろ』のマネージャーだから、万が一誰かに見られても『姫宮ましろ』の代わりだと言えるからである。でもオレたちとしてもこういうミーティングでの司会役をやってくれるので助かっている。
「まず、今回のすたライですけど基本的にはオリジナルユニット曲をメインとした構成になります。そして初めに1期生のオリジナル曲をどうするかということです」
「どうするって歌唱するかってこと?」
「はい。ひなたさんがいないので3人で歌唱するか、ひなたさんのパートを他のライバーさんにお願いするかです。会社としては1期生の判断に任せると」
「七海と颯太はどう?」
「あたしは……あのさ歌わないって言うのはダメなのかな?やっぱり、ひなちゃんが居ての1期生だし。3人じゃなんか寂しいし、それに他のみんなも気が引けると思うし。ダメかな?」
確かに……ひなたさんは休んでいるだけだし3人で歌うのはなんか違うか。日咲さんの言う通り他のライバーさんにお願いして歌ってくださいと言われて歌うのも可哀想だよな。
「オレもそれがいいと思います」
「そうね。私もそう思うわ」
「分かりました。今回は1期生の曲はなしで。次にオリジナルユニットなんですけど……一応会社の意見としてはまず初めに1期生を絡めたオリジナルユニットを提案したいと思ってます。仮歌は来週予定で、姫宮ましろは『姫と親衛隊』、魔月リリィは『魔界組』、青嶋ポアロは『新生SLG』です」
「オリジナルユニット!いいじゃん!」
「魔界組ねwどこかの魔女っ子がやりたがってたものね」
オレは『姫と親衛隊』か。ユニットだから誰だろうか?彩芽ちゃんはいそうだけど……
「ちなみにオレのユニットは誰がいるの高坂さん?」
「あ。えっと……伊集院クララ、双葉かのん、八神えるる、あと私、星影つむぎです」
「え。えるるちゃん?」
「あれ?えるるって颯太のこと知ってるんだっけ?」
「いや知らない。ということは、えるるちゃんにオレの正体を話すってことなのか?」
「そうなりますね。大丈夫ですか?」
まぁここまで来たらいつ話すかというだけのことだしな。えるるちゃんとは1度焼き肉を食べに行ったことあるか……
「えるるなら大丈夫じゃない?というか、いざ話すときが来ても、驚く人はいると思うけど、Fmすたーらいぶのライバー全員認めてくれるとあたしは思うよ?」
「そうね。今までのあなたの活動に嘘はない。でも必要以上に正体を明かす必要はないと思うわよ?颯太の……『姫宮ましろ』の活動に支障が出ると困るだろうしね?」
確かに2人の言う通りかもな。あとはオレが『姫宮ましろ』だと知って幻滅しないか心配だな。えるるちゃんの推しだからな姫宮ましろは。