男の人が走って来た。先ほど全裸で私にぶつかった男の人だ。私のところで止まって、切らした息を整えると
「あの、助けていただいてありがとうございました!」
体をくの字に曲げてお辞儀した。
「貴方たちは、俺の命の恩人です。本当にありがとうございます!」
何度もお礼を言って、その人は去って行った。
「気持ちええやろ。ヒーローは」
「……はい」
私ら死体片づけただけだけどなぁー。と思ったけど空気を読んでおいた。蟹原部長と並んで、朝焼けを眺める。コーヒーを啜ると、徹夜明けの体に染みわたった。
「この仕事は確かに辛いこともある。やけど、さっきみたいに助けた人がお礼を言ってくれることがあるんや。それが一番ワイは嬉しい」