蟹原部長は無言で、猿山を殴った。猿山はもごもごと『おやじにも殴られたことないのに』と言って頬を押さえ、やっぱり私を睨みつけてきた。コイツ結構余裕あるな。
「馬鹿野郎!」
脳が痺れる大声に一瞬頭が真っ白になる。蟹原部長が私を怒鳴りつけたのだと分かったのは数秒後。
「危ないだろうが! 頭だったらお前死んでたぞ!」
標準語……ああ、関西弁はキャラづくりだったんだなぁなんてぼんやり考えていたら
「ちゃんと聞いとるんか!?」
めっちゃ怒られた。
「はい! 聞いてます!」
負けじとこちらも大声を出した。
「じゃあもう、こういうことやんなよ!」
「ムリです!」
「はぁ!?」
「だって私、間違ってません!」
蟹原部長は呆れた顔をした。