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第1章 第4話 ヒーローの敵(アンチ)⑩

「……でも、」 

 蟹原部長は、聞き分けのない子を叱るときのような目でこちらを見つめて


「居酒屋にいた大量の死体を見ただろう。お前もそれの一つになりたいのか?

ポチあれは知能がある分、居酒屋にいた奴より厄介だぞ」


 ポチを、指さした。




 真っ赤な肉塊がたくさん散らばった赤い部屋と、むせ返るような血の匂いがフラッシュバックして、吐き気を飲み込んだ。


 ぎゅっと目をつむる。目を開けて、そして、蟹原部長に指をさされたポチの姿を見た。



「でも、それでも! 無抵抗の相手を、一方的に嬲っていいわけないです!」

「お前みたいな馬鹿が喰われるんだ」

「騙されないようにするのと、積極的に加害しに行くのは違いますよね!」

「口答えするなァ!!!!!」


 蟹原部長のオフィス中に響き渡る大声に、脳がビリビリした。





「それに、ただ虐めてるわけじゃない! 人間に対して従順になるように調教してやってるんだ! お前や俺が、この化け物に喰われたら、誰が人間みんなを救うんだ!? 


この化け物を甘やかして、外に出たときに人を喰ったらどうする!? お前は責任とれんのか!? あ゛あ゛!!? 


俺たちは人喰管理委員会――人喰バケモノから人々を守るヒーローなんだよ!!!」


 真っ赤な顔で、大声で早口でまくし立てる。人間じゃないみたいで、ただただ怖かった。それでも、



「じゃあ、私はヒーローのアンチでいいです」

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