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第2章 第3話 ガールズトーク②

 アイリさんは一瞬、そんなこと? とでも言いたげな少し困った笑みを顔に張り付けてから

「さあ? 知らないわ」

 季節限定のフラペチーノを啜った。


「ていうことは、本名ってことですか? 戸籍標本に載ってる……」

「そうなんじゃない。だって、初めて来たときにそう名乗ったもの」

「えぇ……」


「他には?」

「ポチくんていつからここにいるんですか?」

「気になるの?」


 くす。と挑発するようにアイリさんは嬌笑きょうしょうする。その色っぽい口元に、なんだか自分が子供っぽいと馬鹿にされているみたいな気がして、赤面した。


「だ、だって、人喰管理委員会ここって人喰を退治する仕事ですよね」

「化け物を殺す仕事なのに、化け物を飼ってるのはおかしいってこと? そうねー」


 ぞくり、とした。ポチのことを『化け物』と笑顔で言い切ったことに。




「昔から、あーなんだっけ。そうそう、毒を以て毒を制すって言うでしょ。と言っても、うちが人喰を飼い始めたのは五年くらい前からなんだけどね」


 そう言って、アイリさんは綺麗にネイルされた手で一口シャーベットをつまむと、口に入れた。ゴリゴリと咀嚼して飲み込む。


「でも、ポチあれが来る前はもっと仕事は危険だったし、いっぱい人も死んだの……」

 俯いて、シャーベットの袋をぎゅっと握りしめた。


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