アイリさんは一瞬、そんなこと? とでも言いたげな少し困った笑みを顔に張り付けてから
「さあ? 知らないわ」
季節限定のフラペチーノを啜った。
「ていうことは、本名ってことですか? 戸籍標本に載ってる……」
「そうなんじゃない。だって、初めて来たときにそう名乗ったもの」
「えぇ……」
「他には?」
「ポチくんていつからここにいるんですか?」
「気になるの?」
くす。と挑発するようにアイリさんは
「だ、だって、
「化け物を殺す仕事なのに、化け物を飼ってるのはおかしいってこと? そうねー」
ぞくり、とした。ポチのことを『化け物』と笑顔で言い切ったことに。
「昔から、あーなんだっけ。そうそう、毒を以て毒を制すって言うでしょ。と言っても、うちが人喰を飼い始めたのは五年くらい前からなんだけどね」
そう言って、アイリさんは綺麗にネイルされた手で一口シャーベットをつまむと、口に入れた。ゴリゴリと咀嚼して飲み込む。
「でも、
俯いて、シャーベットの袋をぎゅっと握りしめた。