私は、舌打ちしながらリモコンでテレビを消した。
ポチの頭にゴルフクラブを振り下ろすときの、猿山の笑顔が頭から離れない。『ポチそれは人やないやろ』蟹原部長の氷のように冷たい目が、『誰か一人が犠牲になれば、みんなが救われるの』アイリさんの言葉が頭の中でこだまする。
何が正義だ。何が平和だ。だけど、私に何ができる……?
「みっちゃ~ん」
振り向くと、私が座っているソファーの背もたれにポチが頭と両手を乗せていた。
「何?」
「えへへ~」
目が合うと、幼児みたいに顔をふにゃらせて笑った。特に用はなかったらしい。子供か。
彼の頭の上に手を掲げて止める。撫でていいぞと言わんばかりに頭をこちらに突き出したので、わしゃわしゃしてやった。うわ、ふわふわで気持ちいい。黒猫を撫でているみたいだ。
「ふにゃぁ~」
「よしよし」
しかしまぁ、こんなに可愛い生き物に暴力を振るうなんて信じられない。
でも、非力な小娘である私に体制を変えることなんてできないから、せめて私にできることをしようと思った。私には、彼と対等でいることぐらいしかできないから。だから、
「ねぇ、ポチくん」