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第2章 第5話 狂気なる平穏⑥

 長きにわたり(小一時間)繰り広げられた奢り奢られ論争は、ツルの一声……ならぬ蟹の一声で終焉を迎えた。



「男なら黙って奢れや」

 蟹原部長は部屋に入って来て早々クールポコすると、大声で泣き始めた。


「そんなことより俺の積み立てNISAがよぉおおおお!!!!!」


 髭面の中年男性がカーペットに膝から崩れ落ちてわんわんと幼児のように泣いている姿を見て、ようやく婚活中年男女も我に返ったようで、猿山は自席に戻り、


「部長~日経平均が暴落したって、ショックでしょうけど……そのための積み立てでしょ~」

 アイリは蟹原部長を慰めだした。


「ち゛がうんだよ゛ぉ!!! 昨日の暴落で怖くなって全部売っちまったんだよぉ!! さっき見たら戻っててよぉ!!!」

「あっ……ふーん」


 アイリは察して黙った。蟹原部長は相変わらず、嗚咽を上げながら泣きじゃくっている。見ているとこちらまで心が痛くなってきた。


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