――数分後。
医務室の青いカーテンが開き、猿山が出てきた。入れ違うように、私がカーテンの中へと入った。
女医――セイコは、注射器2本と試験管、消毒用の脱脂綿が乗ったトレイを机に置いた。こちらに向き直り、目の前にある機械で血圧を測るように指示する。セイコは、血圧計に腕をぎゅーぎゅー絞られる私をしっかりと見据えて
「アイリさん」
と、私の名を呼んだ。
「何よ?」
「もう大人なんだから、こういう場所では静かにしていましょうね」
「はぁ!?」
「しーっ」
セイコは唇に指を当てた。こういう仕草もムカつく。それに、何で今蒸し返してくるのよ。そりゃあ、さっきまで待合室でチー(猿山)と騒いでたのはこっちが悪いけどさ。だからって、こういう逃げられない状態でいるときに言うのはないんじゃない?
「つーか、猿山にはそれ言ったの?」
「ええ。それが何か?」
セイコは涼しい顔をした。ムカつく。ムカつく。ホントムカつくこの女。怒りをやり過ごすようにハイヒールのつま先で、床をトントンと叩きつけた。
あは! そうだ。ひとつ思い出した。意地悪をしてやろう。にやりとアイリは笑った。