探偵役・黒葛川幸平を中心にストーリーが展開していく連作ミステリーです。
第2回ネオページ・サポート・プログラム賞(NSP02)の優秀賞に輝いた作品であり、当時は第1章タイトル『遺体の九割が密室で、残る一割は部屋の外』こちらが作品名に入っていました。
とにかく目を引く、タイトル勝ちの作品でした。
書店にならんでいても、ミステリー好きなら思わず手にとってしまう、秀逸なタイトル。
ネオページのミステリージャンルでこの作品をみつけたときのことを、今でもよく覚えています。
タイトルが目に飛び込んできて、読まずにはいられませんでした。
そして、期待を裏切らないプロローグの引きの強さ。
事件に絡むSNSの投稿を巧みに使っているので、読み手からすると新たな展開に目が離せなくなります。
また、凄惨な事件を解決するための手がかりや伏線が見事です。
個人的な印象としては、作者様は『WEB上で読まれる』ことをかなり意識されて、今作を執筆なさったのではないでしょうか。
犯人がだれで、真相がどうであったか。
謎解きの部分をあえて複雑にせず、ライトに仕上げたのではないかと思いました。
そう感じた理由としては、紙媒体であれば「あれはどうだったかな?」「あのときは、ダレとダレがいたかな?」とすぐに所定のページに戻ることができますが、WEB媒体ではそれが簡単にできない場合もあるので、あまりに複雑すぎる謎解きは、読み手のストレスになってしまうことを考慮されたのかなと、個人的には感じました。
作者様の筆力であれば、もっと本格的な推理ものにもできたし、複雑な背景、展開を入れても、完璧な伏線の回収ができたと思います。
それくらい構成が巧みで、文章にも余裕が感じられました。キャラクターたちの魅力もいっぱい。
現在は第3章が連載中です。こちらも、とても面白い。
章ごとに趣のちがうミステリーの魅力がつまっていて、ミステリー好きにも、そうでない方にも、ぜひともオススメしたい作品です。