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第53話 3魔獣の魔石

 それで……なんでギルマスと話をしてるんだっけ? あれ? なんで今日も合う約束をしたんだっけ?


「なんで約束をしたんでしたっけ? 疲れていて記憶が……」


「あ、こちらも疲れているだろうなと思い、話を聞きたかったのですが……こちらが、遠慮をしているのに気づかれて、明日もと仰られたかと」


「そうなんですね、聞きたい事とは何でしょ?」


「言いづらいのですが……決して疑っている訳では無いのですが、ダンジョンのボスの魔石を拝見できないかと……」


「あぁ〜討伐証明って事ですね。当然ですよね」



 異空間収納から3つのバスケットボール以上の大きさで、他の魔石と比べると明らかに異質で怪しげな邪悪な可視化できる程のオーラを放っていて、触れるのもキケンな感じがする。



「あ、これは触ったらキケンですよ。多分」


「……は、はい……雰囲気で、本能がキケンだと伝えてくるレベルですね。触ることや、近づく事さえ出来ませんな」



 受付嬢が困った顔をして、テーブルに置かれた魔石を見つめていた。



「どこかに運ぶんですか? 魔石の移動を、手伝いますけど……他の人は触る事は控えて下さいよ? 多分、良くて死にますね……最悪、魔物や魔獣に変わる恐れもありますからね……分かりませんけど。そんな気がします」


「これは……厳重に扱わないと不味いな……他の職員を呼んできてくれないか?」



 ギルマスが、受付嬢に指示を出すと早足で向かった。



「これ程までとは……ユウヤ殿は触っても問題ないのですね?」


「あ、手に結界を張って触っていますので……問題ないですよ」



 ノックをする音が聞こえたが、受付嬢の軽いノックでは無いので振り向くと、ルークのパーティだった。



「あれ? どうしたの?」


「若様、はっ!? 何ですか……それ……!!」



 ルークの顔色が変わった。どうせ魔石を見て驚いているのだろうと思い振り返ると……邪悪なオーラが渦を巻き天井にまで達していた。徐々に魔石が薄くなり消滅をしてしまった。



「なんです? 今のは……?」


「あぁ……ダンジョンのボスの魔石だよ」


「はぁ……そうですか……不味いんじゃ?」


「うん。そんな感じがするね。嫌な感じがする」



 黙っていたギルマスが口を開いた。



「大至急、冒険者を集められるだけ集めてくれ! ギルドマスターとして非常事態宣言を発令する。王都経由で国王陛下にも知らせるように。3つ魔石が目の前で消失し何かが起きそうな雰囲気すると」


「雰囲気で非常事態宣言は不味いんじゃ……」


「判断をするのは国王陛下と王都のギルマスだろ。ここは俺の村だ、俺が守る!今回は……ヤバい気がする。前回の比じゃないぞ……それなりの準備をして損はないだろ。間違いでしたで済めば一番良いんだがな」


「……ですね、俺も賛成です。ギルマス」


「では、情報の伝達等に取り掛かります」



 ルークと受付嬢のお姉さんがギルマスの部屋から早足で出て行き。俺達3人とギルマスが残された。



「それで、俺はどうしましょ? ダンジョンに向かいますか?」


「いえ、ここに残っていてくれませんか?」


「それは村に結界を張るためにですか? それなら結界は既に張っておきましたよ」


「……助かります。ダンジョンと言っても3箇所ありますし、それが何時、何処なのかを分からずにユウヤ殿を向かわせる訳には……連絡も取れない状態になるのは得策ではないと判断を致します」


 ん〜転移で順番に見回りをすれば良いんじゃないの? ギルマスとしての立場もあるだろうし……従うか。作戦を立てるのは、明らかにギルマスの方が歴が長いわけだし。


「はい。従います。ギルドで待機ですね」


「はい。情報をギルドに集めるように指示を出すので、その情報を分析して3体が何処に出るのかを探ります。おそらく同じダンジョンだと思われますが……大丈夫でしょうか?」


「前回と同程度ならば、問題は無いと思います」



 それ以上でも問題ないけどなぁ……むしろそっちの方が楽しめると思うし。その時は……アリアとミーシャには悪いけど転移で帰宅させる。最悪、俺も逃げれば良いしなぁ。



「ここじゃお邪魔だろうし、食堂で待機してますね」


「こちらを使って構いませんよ。私も表に出ないといけないのでご自由にお使い下さい」


「では、お言葉に甘えてミーシャやアリアの休憩をさせるのに使わせてもらうかもしれません」


「分かりました。他の職員にも伝えておきます」


「では、行きますか」


「宜しくお願いします」



 ギルドのホールに出ると大勢の冒険者が集まっており、受付から出れなかったので3人で食堂へ転移をした。



「すごい人数だな……それにやる気も満ちてるって感じだ」


「うん。スゴイねぇ……」


「お腹すいたぁ〜」


「さっきお菓子を3人分食べてただろ?」


「あれは、お菓子だよっ。ご飯食べたいっ」


「あんまり食べすぎると、動けなくなるぞ」


「……食べないと動けないぃぃ〜」



 ミーシャがお腹に手を当てて、上目遣いで目をうるうるさせて訴えてきた。



「はいはい……好きな物を頼んで良いって……でも食べ過ぎには注意しろよ……留守番になるからなぁ」




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