シャルが首を傾げて見つめてくる。俺と話をしていることに誰にも、まだ気づかれていないのでシャルを連れて受付に向かった。
「あ、ユウヤ様。今日は、どの様な……」
「あ〜えっと、ギルマスに挨拶をと思って」
「はい、かしこまりました」
「聞いて間、中で待ってても良い? 人目があるから」
「はい。どうぞ、こしらです」
普通の待合室というか、休憩室に通されたが直ぐに呼ばれた。
「お待たせして申し訳ありません。ギルマスがお待ちです」
「あのさ、何なのこの違いは……ねぇ!」
「俺に聞くなって」
シャルが小声で俺に文句を言ってくるので振り向くと、シャルが意外にも緊張をした表情で俯いていた。
シャルも緊張をするんだなぁ……始めてみたかも? 昔に恐ろしい魔獣を見た時でさえ、コワがっていたけど緊張をした表情は見せていなかったのに。
「じゃあ、誰に聞けば良いのよっ?」
「ギルマスか、受付錠のお姉さんじゃない? 聞いてやろうか?」
「は? ちょ、待って! じょうだ……ん……」
面倒だったし、丁度二人が居たのでシャルが何かを話していたが無視をして話を聞いた。
「幼馴染の、このシャルがギルマスに面会を申し込んだらしいんですが、受け付けててもらえないと言っているんですが」
「あぁ。内容次第ですかね。確か……ユウヤ殿のランク急上昇の不正についてと……。これは規約にもありランクの昇格、降格についてはギルド、王国のも関わる事なので詳細のは極秘事項であり、説明をする義務は無いので面会を受け付けて居なかったのですが。ご不満でもありましたかな?」
ギルマスが不愉快そうにシャルを見つめると、シャルが俯き答えもしなかった。
おいおい。文句があるんじゃなかったのか? あの勢いは、どうしたんだよ? 真相を明らかにするって言ってなかったか? 面倒だなぁ……後で、また俺がシャルに文句を言われるんだろ?
「えっと、俺がCランクになって直ぐにSランク、当日にSSランクになったのを不審に思い不正だと言われているのですよ。それで俺が、お金や口利きをしてもらったと思っているようで……」
「はぁ……そうですか。ユウヤ殿には、ご迷惑おかけしました。最速でCランクになったのは実績、ポイントで基準に達したので実力が認められたのです。これは記録にも残っていて正式なものです。理解できますか?」
「はい……」
「では、次ですね。Sになった経緯ですが……この村を魔獣が襲い壊滅的被害を受けていたのです。そこにAランクの冒険者達が瀕死の重傷を追う程の魔獣を、ユウヤ殿のパーティが殲滅し、他のパーティ、村人を治療をし的確な指示を出し無事に救われ被害は最低限で済みました」
この時、シャルはダンジョンに潜っていてパーティが瀕死の重症を負っていた時で、村の状況は転移で返されて惨状は知らないんだったな。
チラッとギルマスがシャルを見つめ、理解できたかを様子を見て話を続けた。
「Aランク以上の実力があるという証明になると思いませんか? Aランク冒険者を助けられる程の力を持ち実力を伴っているのにCランクのままにして置くのは不利益で、お互いに損ですからね。お分かりになりますか?」
「……分かりました」
「では、次ですな。SSランクというランクは、特別で伝説級と言われる程のランクで、王国内でもおりません。Sランクが上限でした。そのSランクの冒険者が王都を襲う魔獣の討伐に出向き瀕死の重傷、死亡者も出す事態となり、ユウヤ殿の噂を聞いた国王陛下が直々に討伐の指名をお出しになられたのです」
はい? それ初耳なんですけど? 誰からも聞いてないってば? 王国から討伐部隊が出てるって聞いた気もするけど、Sランクだったのか。
「SランクのパーティやSランク冒険者が太刀打ちできない魔獣ですよ? そのボスを1日に3体も討伐をして、無事に帰って来る快挙を成し遂げたのです。実力は本物です。私も認め、国王陛下も認められたのです」
ギルマスの表情が変わった。鋭い目つきでシャルを見つめていた。国王陛下も認めたのを否定されているからか?
「これに異議をと仰られるならそれなりの覚悟をしてもらわなければなりませんぞ? 他のパーティも大勢ユウヤ殿に助けられ言わば命の恩人、村、家族を救った救世主様と崇める者もおるくらいで、それを不正だと言われれば……反感を買うのは当然だと思いますが? 理解できましたか?」
「……はい。理解できました」
シャルが怯えた表情をして小刻みに震えているのが分かった。
ここまで脅しておけば少しは大人しくなるだろ。
「本当ならば、ギルドの秩序を乱したということで、冒険者の資格の剥奪ですよ。貴方の発言で、貴方の元所属をしていたパーティは奇異の目で見られ、今頃は苦労をしていると思いますよ」
「……すみませんでした! ごめんなさい」
俯いていたシャルが、顔を上げ申し訳無さそうに謝罪をした。
「謝る相手が違いますよ。先ずはユウヤ殿に皆の前で謝罪をし許しを得て、元パーティの方々にも謝罪をすることですね。話は以上ですかね? 以上でしたらお下がり下さい」
有無を言わせずに言うと、受付嬢が外へ連れて行ってくれた。
「はぁ……疲れた。ギルマスが相手にしないからですよ」
「はぁ、すみません。ここまでの騒ぎになるとは思っていなく……申し訳ない!」
「シャルの冒険者剥奪は勘弁してあげて下さい」
「はい。ユウヤ殿が仰られるならば。従います」
いつも通り、お茶とお菓子が出ていて隣で幸せそうに食べているミーシャが、俺の分を食べ終わりアリアの分を狙っていた。
「アリア、良いか?」
「うん。いいよ♪」
それだけで理解できる脳が羨ましい。そしてミーシャの集中力も羨ましい。アリアのお菓子をミーシャに渡すと……お礼の代わりに、俺を見つめて、満面の笑みで微笑み返された。
あ、この笑顔は可愛すぎるって、逆らえません……