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第51話 初めてのバーベキュー

「これからは毎日、出来るんじゃないか? 冒険者をしなくても暮らせていけるしなぁ」


「やったぁ〜♪」


「あれ? 冒険者の仕事はしなくても良いの?」


「アリアが、冒険者の仕事をしたいなら続けるけど?」


「わたしは、うぅ〜ん……ユウくんと一緒に居られるならって思って……冒険者になったから……」



 え? そっか……そうだったんだ? てっきり冒険者の仕事をしたくて、パーティになってくれたと思ってた。



「そういう事だったら、たまに技術が落ちない程度に依頼を受ける程度で良いかもな」


「「うん♪」」



 火の入りが良いよう小さくカットをした肉から油が薪炭に垂れ炎が上がり、周りに油と肉が焼ける香ばしい匂いが漂う。


 他にもアリアが香草を採集をしてくれて、香草をもみ塩コショウで下味を付けた香草を肉に擦りつけた肉からも美味しそうな香りが漂った。



「もう焼けたんじゃない? まだかなぁ~?」


「ん〜肉串の方は食べても良さそうかな。生だったら焼き直せば良いよ。生は食べるなよ〜? お腹が痛くなっても知らないぞ〜」


「はぁい♪ はむっ! 熱いっ! あつ、あつっ。あわわわぁ、アリアちゃん……焼けてるよね?? 大丈夫かなぁ? はふぅ……熱いぃ……」


「うん。焼けてるよ。大丈夫だよ♪」



 ミーシャがアリアに肉の断面を見せて確認をしているが、口に入れた肉が熱くて涙を流しながら聞いている姿が可愛く、微笑ましい。


 香草を塗った大きな肉を定期的に向きを変えつつ、肉串を食べていると、アリアが鍋を異空間収納から出した。



「あれ? これから作るの?」


「えへへへ……♪ ううん。ユウくんのマネだよぅ。家でね、下準備をしてきたんだ〜♪ 後は肉串のお肉を入れれば完成だよっ!」



 どうやら家でスープを作って、異空間収納に入れて準備をしてきたみたいだ。こういうサービス精神と気遣いが素敵だ。

 アリアとミーシャの異空間収納は、俺と同じで時間停止が付与されている。なので傷まないし、料理の出来立てを入れれば、出した時も熱々のままだ。



「なんだか、昼から豪華な食事になっちゃったな」


「そうだよね〜♪ ミーシャちゃんのおかげだね〜」


「え? あ、わ、わたしのおかげなのっ!? ちがうっ。アリアちゃんのお陰でしょっ」



 アリアに褒められてミーシャが顔を赤くさせて、何故か俺の後ろに隠れた。


 ん……誰から隠れてるんだよ。っていうか、肉串が服についてますけど。直ぐにキレイに鳴るから良いんだけど。


 大きな肉も良い感じに焼けて焼色もバッチリで、切ると肉汁が溢れ出し中までしっかりと火が通っていて完璧だ。香草風味とスモークされた風味が香り、外側がカリカリと焼けて中は柔らかく噛むと、じゅわぁぁっと肉汁が口の中に広がり肉の旨味と塩加減も丁度いい。


 アリアのスープも野菜がたっぷりで、肉の香ばしい匂いと旨味がスープの野菜から出た旨味と混ざり合って美味しすぎる。それに肉から出た油がコクを与えてパンによく合う。


 食事を楽しむと腹が膨れて眠気が……



「ユウくん、少ししたら出掛けるんじゃ? 寝ちゃダメだよぉ」


「そうだよっ。朝、早く出掛けるって言ってたのにぃ〜」



 片付けが終わった二人から文句を言われ……仕方なく立ち上がりギルドの前に転移でやってきた。


 ギルドに入ると、昼なので冒険者は殆ど居なくガラガラだった。見渡すと目立つ5人組が他のパーティと一緒に食事をしているのが目に入った。


 なんだ、先客がいるなら先にギルマスに挨拶でも……。あれ? シャルが隅っこの壁に寄り掛かり、こちらを見つめていた。


 気にはしていたが、話したくない。関わりたくない。感じなんですけど。面倒だなぁ……



「シャル。どうしたんだ?」


「……どうしたじゃないっ。もぉ。誰のせいよ!?」


「は!? 俺のせいじゃないだろ?」


「むぅ……。じゃあ……誰のせいよぅ?」


「自分のせいじゃないのか? 俺は、シャルに何もしていないし。シャルが問題だって言っている、ランクだって上げて欲しいなんて、受付嬢にギルマスにも言っていないしな」


「ホントなの? なんでCランクになったばっかりなのに……Sランクに? しかも当日にSSランクっておかしいでしょ!」


「はい、はい……俺が、決めたわけじゃないし。直接、ギルマス本人に聞いてくれよ」


「はぁ?ギルマスに会えるわけないじゃない。受付嬢さんに何度もお願いしたもんっ。合う約束を取ってからお願いしますって。合う約束をって言ったら……聞いておきますだった……」



 そりゃ……そうだろ。そんな話を聞いていたら仕事にならなくなるだろ。少しは考えてくれ……。それに自分が置かれている立場を理解しているのか?? 俺が言うのもだけど……助けられて、その相手に堂々と嫌がらせ行為を皆の前で昨日したんだぞ? 俺は気にしてなし、シャルの性格を理解してるから良いけどさ。特に、慕ってているパーティが増えちゃって周りが許さないだろ……。もう二人だけの問題じゃなくなってるのに気付いてくれってば。



「はぁ……じゃあ付いてきて。でも、納得したら大人しくしてろよなぁ」


「ん? 勿論、納得したらね」


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