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第59話 夜の散歩

 討伐はしていないけど、魔石の管理は俺がするし……盗難も考えられないし……。ケルが暴走をしたら注意をすれば収まるだろうし。問題ないよな、この村へ連れてくるわけじゃないし、ケルを見たのは俺とアリアとミーシャだけだし……ダンジョン内には、あの元悪魔を名乗る獣人くらいだし。



「魔石ごと消滅をさせ、封印をしたので復活する可能性は少ないと思いますよ。絶対とは言い切れませんが……俺が、死ななければ問題ないと思います」



 俺が死んだらケルを止める者が無くなるので、その後の事までは責任は持てない。


「と言う事は……完全に討伐の成功ですな! しかも封印までして頂けるとは!」


 冒険者達は死を覚悟していたようで、気が抜けその場へ座り込み安堵の表情をして、近くに居た冒険者と顔を見合わせ笑い合っていた。冒険者同士の絆が深まり、連帯感も生まれ皆いい表情をしている。


 さて、報告も終わったし帰るか……いつものパターンなら、この後は宴会になるのを知っている、その前に逃げ出そう。


 ミーシャのマネをして音を立てずに移動をして、スッと消えるように転移をして帰宅をした。家に入ると……リビングの床にシャルとケルが向かい合わせに座り見つめ合っていた。



「……何してるんだ?」


「観察……」


「……そう」


「うん」



 シャルトは長い付き合いだったけど、こんなヤツだったっけか……?



「あのさ、触っても多分大丈夫だと思うぞ?」


「それは……ちょっと……無理かなぁ。触ろうとすると唸るしぃ……」


「そうなのか?」



 アリアの方を向くと頷いていた。



「ケル、こっちに来て」


「くぅ〜ん♪」



 可愛い甘えた声を出し、ソファーに座る俺の足元へ寄ってきた。ケルを持ち上げ膝の上に乗せると……違和感がある頭が3つか……どれを撫でれば良いんだ? それに毛が硬いしペットって感じじゃないな……完全に番犬だな……地獄の番犬ケロベロスだしな。にしても、毛並みが悪いよな……もっと黒は仕方ないとして、ふわふわにしたいなぁ。



「なぁ、ケル。毛並みをふわふわにしたいんだが良いか? 問題あるか?」


「くぅ〜ん♪」



 機嫌よく甘えた声を出したって事は、良いって事だよな? 試しに嫌な事を言って確認をしておくか。なんでも返事をしてる可能性もあるしな。



「明日、ダンジョンに帰るか?」


「くぅぅぅん……」


「帰りたくないのか? ここで一緒に暮らすか?」


「くぅ〜ん♪」


「そっか、そっか……じゃあ毛並みをふわふわにするぞ」


「くぅ〜ん♪」


「ふわふわ毛並みで防汚、防臭を付与する。物理攻撃、魔法攻撃のダメージ軽減を追加付与する」



 フワッと輝くと、毛並みが変わり輝く黒い毛並みでふわふわした美しい毛並みで、撫でると気持ちが良い手触りになった。少し臭っていたがそれも無くなり無臭になった。


 嬉しかったのか3つの頭から頬を舐められ、くすぐったいといか……涎が……おいおい……。近くで見て羨ましそうに見ていたシャルの手を引き、隣に座らせた。



「ケル、シャルにも触らせてやれって」


「くぅ〜ん♪」


「良いってさ」


「噛んだりしない? 怒らないかなぁ?」



 シャルってこんなに慎重派だったか?


 シャルが恐る恐る手を伸ばそうとしていると、1つの頭が気付き、シャルの手をペロッと舐めた。



「きゃっ。 わぁ……舐められた! ビックリぃ……」



 シャルがケルの体を撫でて嬉しそうにしていた。



「柔らかくて、良い手触りだねぇ〜可愛い〜」



 いつも隣に座ってくる、ミーシャは警戒をしてテーブルの椅子に座って、こちらを眺めていた。



「ミーシャも、こっちに来いって」


「いやぁ〜。むりぃ〜こわいっ! そんな近距離で襲われたら……回避できないっ」



 ここで無理に誘っても、嫌な物は仕方がない。なれるまで放って置くか。夜に森の散策にでも散歩にいくかぁ……少しイベントというか触れ合いの機会を作るのも良いよな。



「夜に、散歩にいくかぁ〜」


「討伐!? 行くっ♪」


「討伐じゃないぞ〜散歩だぞ」



 ミーシャが嬉しそうに反応したが、討伐は勘弁して。帰ってきたばっかりなんですけど。



 夕食を食べ終わり、ケルを連れて夜の森に散歩に入った。周りには通常より魔獣の気配は減っていたが、夜になりそこそこ気配を感じるが、いつもと様子がおかしい。近寄ってくるはずなのだが、一定の距離を取り出会わないようにしている感じだ。



「魔獣、出ないねぇ〜」



 残念そうにミーシャが呟いた。魔獣が現れても良いように双剣を装備していた。



「森には魔獣が出てもおかしくないのにぃ……」


「気配は感じますよぉ? 避けられている感じですね」


「そうだな。多分、ケルの気配に怯えている感じか」



 ガサガサ……と音がすると魔獣ではなく、ゴーレムの様な魔物が現れ襲いかかってきた。ケルが威嚇をすると慌てて方向を変え逃げるように去っていった。



「むぅ……それ邪魔ぁ〜逃げちゃったぁー!」



 ミーシャが頬を膨らませて、文句を言ってきた。


 ん……仲良くする機会をと思っていたんだけど……俺が守れと命令してるしなぁ……キケンが迫れば当然、危険を回避、排除しようとするだろうな。知能は高そうだしな。


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