「お、レザリオじゃねぇか」
「ほんとねぇ、どうしたのかしらぁ」
「ん――おぉ、お前ら」
冒険者ギルドの入り口に向かっていた2人の男女は、レザリオに声を掛ける。
するとレザリオもそれに気付いたらしく、手を挙げて返した。
どうやら知り合いらしい。
レザリオに声を掛けた2人は、どちらも武装をしており、おそらく冒険者だろう。
男の方は長い槍――いや、十文字槍というのだろうか、それを片手に持っており、頭には赤いハチマキを巻いている。
対して女性は、赤い宝石かはめ込まれた杖を持っており、頭には大きな魔法帽子、身体には紫のローブを羽織っている。そしてめちゃくちゃおっぱいがデカい。
2人とも全然イメージが違うが、どちらも確実に俺たちよりは手練な冒険者だと言う事はまじまじと伝わって来た。
するとそこで、魔法使いであろう女性が、俺たちに気付いたようで、レザリオにこう尋ねた。
「――って、レザリオちゃん?後ろの子たちはだぁれ?」
「ん?あぁ!コイツらはな――」
俺今「子」って言われたぞ……?一応28なんだが……一体このお姉さん何歳なんだよ……
そして、レザリオが俺たちとの出会いから今までを簡単に説明し終わると――
「そうなのか、レザリオ、お前が街を案内なんてなぁ!絶対出来なかっただろ?」
「うっさいわ!ちゃんと出来てたぞ!なぁお前ら!」
「あ、あぁ」
「ほらみい!」
「いや、めちゃくちゃ気を使って言ってるだけだろ」
すると、そこで槍を持った男が近付いてきた。
「お前ら見ない顔だな、俺はスザクであっちの女はミラボレアだ。別の街から来たのか?」
「俺はとうまだ、昨日4人でファスティ大陸からこっちに来た。」
「私はみさとよ」「ちなつだ」「くるみだよ!」
「よろしくな」
「あぁよろしく」
俺と槍を持った冒険者――スザクは固い握手を交わす。
するとそこで、スザクがこう質問をしてきた。
「ちなみにお前らはなんでティルトルに来たんだ?」
冒険者の多い街だからその分良い報酬の依頼があると思ってとかか?と、スザク。
いや、普通そう思うよな。中々いい線行ってると思うぜ。
そう、
俺は軽くため息を吐くと、苦笑いでこう返した。
「いや、実は俺たちレザリオに中央大陸へ招かれたんだよ。そのせいで村も救わされたし大変だったぜ、全く。」
まぁ、アンテズ村の人たちがあれで幸せになったんなら後悔は無いが。
「ん?――あぁ!!って事はお前らがあの注目の新人パーティーか!」
「あぁ、レザリオちゃんが言ってた子たちって、この子たちの事だったのねぇ」
え?注目の新人パーティー?どういう事だ?
2人は何故か納得していたが、俺たちには何がなんだが分からなかった。
「なぁ、注目の新人パーティーってなんの事だ?」
「あぁ、実はな、少し前にこの街でエルフとの決闘に勝った冒険者を始めたばかりのやつが現れたって少し話題になったんだよ。」
なんでもエルフ族は、数多く存在する種族の中でもリザードマン(ヒルデベルトも同族)と肩を並べてタイマンに強い種族らしく、それに冒険者になったばかりの新人が勝つというのは中々に凄い事らしい。
そして注目の新人パーティーというのは、それを聞いたレザリオが付けたあだ名なんだと。
まぁあの決闘は何度も言っているが俺の力が全てでは無く、むしろユニークスキルでサポートをしてくれたみさとの功績とでも言うべきなんだが。
「って事は、別に依頼を受けに来たって訳じゃないのか?」
「あぁ、後3日後に開催されるという帝都ティルトル剣術祭にはせっかくだし出ようと思っているがな」
「なるほどな。――じゃあよ、せっかくだし今日何か依頼を受ければ良いんじゃねぇか?」
「「え?」」
まぁ確かに、今はまだ昼頃だし全然出来なくも無いのだが――
「いや、全然ありなんだが武器をレザリオの家から持って来て無くてな――」
「マジか?普通冒険者ならいつでも依頼を受けられる様に武器を持っておくのが基本だと思うんだが。」
「まぁまぁ、まだ新人ちゃんなんだしぃ、武器が重いから動きづらいてかぁ、あるのかもねぇ。」
はぁ、ほんとに。スザクの言う通りだぜ。
誰だっけ?武器を持ってたら重いから持ってくなって、言ったやつ?
俺たち4人は同時にさっきから無言で気まずそうにしているレザリオを睨む。
するとそこでレザリオは、
「そ、そや!しゃあないからワイがお前ら4人の武器を家から持って来たるわ!」
まるで自分が、新人のミスをフォローする先輩かのようにガハハと笑いながらそう言うと、飛ぶ様に家の方へ走って行った。
あ!アイツ!逃げやがった!
そんな様子のレザリオにスザクとミラボレアは首を傾げていた。
「ま、まぁ良いか。じゃあその間に依頼を選ぼうぜ。俺も手伝ってやるからよ」
「私も、分からない事があったら教えるわぁ」
「あぁ、ありがとう。」
まぁ、レザリオも自分が悪いのを分かってて今ああいう行動を取ったんだし、許してやるかね。
こうして俺たちは、冒険者ギルドの扉へ歩いて行った。
---
「よし、じゃあ選ぶか。ちなみにお前ら等級はなんだ?」
あの後、俺たちは冒険者ギルドの中に入り、今は依頼が大量に掲示されているクエストボードの前に立っている。
ちなみにスザクとミラボレアはもう依頼を終えたらしく、今日はやることが無いから手伝ってくれるんだと。
「俺たち全員中級上位だ。」
「中級上位か――じゃあここだな。」
俺たちの等級を聞いたスザクは、壁いっぱいのクエストボードの中程を指差す。
そこを見ると、一番上に「中級上位」と書かれており、クエストボードの左から右に掛けて書かれている等級が上がって行っていた。
そしてその中級上位の右側に目をやると、そこには当然「上級下位」の文字。
上級になると、一気にそのクラスのモンスターの数が減るのか、依頼の数は一気に減っていた。
あぁ、憧れるぜ上級!字ズラだけですげぇって思えるのは流石だと思う。
(もちろん、ラペルに上級の冒険者はおらず、中級上位の冒険者も俺たち、エスタリたちを含む数人のみだ。)
するとそこで、俺の頭の中にひとつの疑問が浮かんだ。
それは、「この2人の等級が何処か」という事だ。
「ちなみによ――スザクやミラボレアの等級は何処なんだ?」
俺は頭に浮かんだ疑問をすぐに口にする。
するとスザクは「俺か?」そう言い、
「俺は上級下位だ。」
「私も上位下位よぉ。」
「じょ、上級……!」
「凄いわね……!」「だな……!」「私もなりたいよ……!」
いや、多分そうなんだろうなとは思ってはいたんだが――やはり初めて上級の人間を目の前で見たら興奮してまうぜ……!
すると――そんな俺たちを見たスザクは不思議そうに首を傾げる。
「ん?なんでそんなに俺たちが上級下位と知って驚いてるんだ?」
「いや、確かに中央大陸なら珍しく無いのかもしれないけどよ――」
「いや、結構珍しいとは思うが。」
「そ、そうなのか?」
じゃあなんでスザクは驚いた俺たちを見て不思議そうにしてたんだよ?
正直今の言動はよく分からんぞ?
「じゃあなんで――」
俺はそう聞く。
すると今度はミラボレアがこう言った。
「だってあなたたちぃ、昨日からずっとぉレザリオちゃんと一緒にいるんでしょうぅ?」
「あぁ、居るが?」
それがどうしたんだよ?
「ならぁ今更驚くなんてぇ変じゃなぁい?」
「なんでだ?」
「だってレザリオちゃんの等級はぁ、」
そこでスザクとミラボレアは同時にこう言った。
「上級上位なのよぉ?」「上級上位じゃねぇか?」