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第43話【世紀すら破壊する大剣〜レザリオThe・ストーリー〜】


「え?なんでだ?レザリオはこの街でも最強と謳われてるんだろ?」


 もしくはアンテズ村の村人が言っていた事は間違っていたのか?

 しかし、スザクは「そうの通り。レザリオはこの街で1番強い」そう言う。


「じゃあどういう事なんだよ。」

「ん?お前らレザリオのことをよく知らないのか?」

「え?それってどういうこと?」

「みさとも分かってないって事はやっぱりお前ら全員レザリオの力の事を知らないんだな。」


「ん?ちょっと待ってくれ。まさかなにかあるのか?」

「あぁ、まあな。よし!じゃあ話してやるよ。全然暗い話でも無いから気は抜いとけ」

「そうなのか、分かった。」


 そうしてスザクは、レザリオがなぜ最強と謳われているにも関わらず、帝都ティルトル剣術祭に出ても優勝出来ないと言い切れた理由を話し始めた。



 その昔(と言っても数年前だが)この街に荒くれ者の冒険者が居たそうだ。


 その冒険者はいつもひとりで口も悪く、モンスターをその驚異的な力で吹き飛ばしていた事から、付いたあだ名は「狂乱の戦士バーサーカー

 しかし、そんな彼もひとつの悩みを抱えていた。

 それは、その力が自分でも制御出来なくなっている事。


 いつも荒れている彼ではあったが、それは日に日に酷くなっていた。

 そんな時、彼はひとりの魔術師にある依頼をした。


 それは「この力を制御する方法は無いのか」

 すると魔術師はこう言った、「ひとつだけ方法がある」と。

 その方法は、「身体の中に眠る魔力を全てひとつの武器に封印する」というもの。


 そうすれば、普段は全く力を使えなくなるが、その武器を使っている時だけは封印した魔力を解き放つ事が出来ると。


 そして彼はその提案を快諾。自身がずっと使っていた大剣を「世紀すら破壊する大剣センチュリーブレイカー」と名ずけ、その魔力を全て武器へと封印した。


 ――これが彼、レザリオ・ベルーガの過去だった。


「じゃあ今のあいつは――」

「元々あった魔力が抜けた状態だな。そのせいか、普段はあんな風に口調もおかしくなったんだ。」

「なるほどね」「そんな過去があったんだな」「だねー」


 って事は、あの背中に背負った大剣を抜けばあいつは――

 俺は向こうで酒を飲みながら陽気に踊っているレザリオを見る。


 確かに、この話を聞いた後なら俺たちの武器を届けに来た時も大剣を背負っていた理由もよく分かるな。

 だってその武器が無いといざという時に力を出すことが出来ないから。


「――だから、当然いつも使っている武器では無く、その形をした木刀で戦う帝都ティルトル剣術祭ではあいつの真の力を発揮する事は出来ないって訳だ。」

「って事は今のあいつなら俺でも倒せるって訳か?」


 俺は興味本位でそんな事を聞いてみる。

 いや、そりゃ本気でそんなことをする気は微塵も無いが、なんか気になるじゃん?


 するとそれを聞いたスザクはしばらく腕を組んで考えた後――笑いながらそう答えた。


「どうだろうな」

「おい、俺はそんなに弱く見えるかよ」

「いや、そういう事じゃなくてな、あいつは魔力を全て封印したが、生まれつき持っている身体能力は変わらない訳だからある程度は強いんだよ」

「なるほどなー」


 いや、だとしても流石に勝てると思うんだけどなぁ。

 最近中級上位まで上がったし、少し自信が湧いてきている俺である。


 するとそこで、酒を飲み終えたのかレザリオが少しフラフラしながらこっちへ戻って来た。


「ただいまぁ〜ってお前ら、さっきからワイの事をチラチラ見てたみたいやが、なんの話してたんや?」

「なんでもねぇよ」

「なんやねんそれ」


 こうして俺たちは、レザリオの過去を知ったのだった。


 ---


 それから俺たちはしばらくラペルでの事や依頼の事などで会話を楽しんでいると――受け付けのお姉さんが突然大声を出した。


「皆さん、帝都ティルトル剣術祭のトーナメント表が決まりましたので、クエストボードに記載します。」


「おお、やっと来たか」

「今回はぁ、どんな子たちと競うのかしらぁ?」

「マジでもう決まったのか?」

「そうみたいやで」


 確かにさっき、参加登録の受け付けを終了したとか何とか言ってたが、まさかこんなに早く決まるとはな。

 ――まぁ確かに、明後日が本番の日ならこのくらいの速度じゃないとダメなのかも知れないが。


 ――とにかく、決まったなら見に行く他無いだろう。


「よし!じゃあ見るか!」

「そうね」「だな!」「うん!」


 俺たちは席から立ち上がると、軽い人集りの出来ているクエストボードの前まで歩いて行く。

 そして、人をかき分けてトーナメント表の目の前まで移動した。


「って、やっぱり今回も参加人数は少なかったんだな」

「どれどれ――って、本当ね。」

「8人か?」

「だな」


 てっきり俺は何枚にも分けられているのかと思っていたが、やはり参加人数は少なく、俺、みさと、ちなつ、スザクを含んだ8人だった。(くるみの出場する魔法の部の方も8人だったぜ)


 そして、肝心なトーナメント表の内容なのだが――

 なんと!俺たち4人は運良く1回戦目では誰も当たっていなかった。

 ――これ、どんな確率だよ。


 上から、〇〇VSスザク、〇〇VSみさと、〇〇VSちなつ、〇〇VS俺。

 だから、仮に全員勝ち上がれば、2回戦目はスザクVSみさと、ちなつVS俺って事になる。

 今の説明、分かっただろうか?

 (魔法の部の方も、ミラボレアとくるみは離れていて、どちらも勝ち進めば決勝で当たる位置だ。)


「――このトーナメント表、中々すげぇな」

「おぉ!私ととうまが互いに勝ち進めば当たるのか……!」


 すると、そこで後ろから声が掛かる。

 スザクの声だ、きっと遅れてトーナメント表を見に来たのだろう。


「おーい、どうだ?」

「スザク!すげぇぞ!」


 だから俺は、そこでトーナメント表の内容をスザクに口頭で説明した。


「――どうだ?」

「確かに凄いな。ここまで初戦で当たらないのは中々無いぞ」

「でしょうね、私も初めて見たもの」



 それから、トーナメント表を見終わった俺たちは他の冒険者の邪魔になるからとクエストボードから離れ、冒険者ギルドの入り口前で集まった。


「よし、じゃあトーナメント表も見た事だし、今日明日はゆっくり過ごせ。お前らは別に出稼ぎに来た訳じゃ無いんだからな」

「あぁ、そうするぜ。良いよなお前ら?」

「えぇ、良く考えれば冒険者を初めてから全然休んで無かったものね」

「だな、私も良いぜ」「私も良いよ」


 よし、じゃあ決まりだな。

 っと、そこでレザリオが俺たちにこう聞いてきた。


「なぁ、そういえばお前ら、冒険者になる前は何してたんや?」

「えっ……!?」

「ちょ、ちょっととうま!」


 しまった!今日に転生前関係の事を聞かれたもんだからバリバリに動揺してしまったッ!


「ん?どうしたんや?」


 どうする……どうする俺。

 というか、なんで俺たちは転生した事を隠しているのだろう。

 いっそこの機会に言ってみても良いのかもしれない。


「実は俺……前の世界でヒキニートしてたんだ――――」

 ってんな事言えるかァァァァァァ!!


「そ、そんな事よりもよッ!なぁスザク!お前は今「お前らは出稼ぎに来た訳じゃ無いんだから」って言ったが、出稼ぎに来る奴らもいたりするのか?」

「お、おう。いるぜ……?」


 ふぅ……何とか転生バレは回避出来たのだろうか……?

 レザリオは自分の質問を濁されて頬を膨らませてご機嫌ななめな顔になっているが、まぁ良いだろう。


 しかし、そこで、俺が話題を変える為にした「出稼ぎに来る奴らもいるのか」と言う問いに対してミラボレアから懐かしい言葉が飛んで来た。


「いるわよぉ。有名な子で言ったら、ボロスウェル夫妻、とかねぇ。」

「あぁ、あの2人か。魔法を色んな人に教えて回ってるんだよな――確かお前らが来た大陸と出身は同じじゃ無かったか?」


 いや――同じも何も、どれだけ聞いた名前だと思ってるんだ。

 ボロスウェル一家。忘れてるやつの為に軽くおさらいしておくと、俺たちがラペルで泊まらせて貰っていた家。それがボロスウェルの家だ。


 だから今ミラボレアとスザクが言った夫妻ってのはウェーナの両親って訳だな。


「おぉ、有名なのかその2人は?」

「あぁ、まさか知ってるのか?」

「まぁな。実は俺たち、あっちラペルに居る時はボロスウェル一家に住ませてもらってたんだよ」

「おぉ!そうなのか。」

「お前らえらい変わりもんやな。」

「「お前にだけは言われたくねぇ!」」


 こうして、何だかんだ中央大陸での毎日が過ぎて行った。

 エスタリたちは元気にやっているのだろうか?

 さぁ、2日後は帝都ティルトル剣術祭だ。

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