エスタリを殺した変異種サラマンダー討伐から数日後、俺たち4人は冒険者ギルドに呼ばれ、訪れていた。
とりあえず、この間に起こった出来事を簡単に紹介して行く事にするか。
まず、俺たちと共に変異種サラマンダーを討伐したオネメルとヒルデベルトは冒険者を辞める事にしたらしい。
---サラマンダー討伐後の宴会中---
「――いやぁ、ほんとに勝てて良かったわ!今日は飲むわよぉ!」
「みさと随分テンション上がってるな。ってかお前まだ未成年じゃ――」
「そんなのはこの世界じゃ決まってないでしょ?適材適所よ!」
「いや、その使い方絶対ちげぇだろ」
この時、冒険者ギルドは俺たちのサラマンダー討伐を祝福して軽い宴会を開いてくれた。
現在は中心の机に俺、みさと、ちなつ、くるみ、オネメル、ヒルデベルトで楽しく談笑中だ。
するとその時だった、オネメルがその話題を出したのは。
「そういえば、そこの4人には言っていなかったのだけど、私とヒルデベルトは今回のサラマンダー討伐を最後に冒険者を辞めることにしたわ。」
「え?マジか?その話」
俺は一瞬オネメルが酔ってこんな事を言っているのかと思い、ヒルデベルトの方を向いて確認を取るが、ヒルデベルトもそれに頷いた。
「正直なところ、エスの居ない私たちが冒険者を続ける未来なんて見えないもの」
「そうですな」
「なるほどな、って事は、もう戦ったりはしないのか?」
「ん?いや、私から戦いを取ったら何が残るって言うのよ。冒険者を止めたら中央大陸に渡って、どこかの街で憲兵団にでも入ろうと思ってるわ。」
「あぁ!そういう事か。ヒルデベルトは?」
「我はこの大陸に残ろうと思っていますぞ。」
「なるほど」
確か、こいつらは中央大陸に行く事を目標にしてたもんな。だからエスタリ亡き今、形は変われどその目標を果たしに行くって訳か。
「ま、ちゃんと考えた事なんなら良いんじゃないか?」
「うんうん!さぁ、もっと飲むよぉ!」
「おいお姉さん!酒もっと持って来てくれ!」
「お前らなぁ……」
---
――とまぁ、こんな感じだった。
あの時も言ったが、俺はオネメルやヒルデベルトがちゃんと考えて選んだ道なんならそれが正解なんだと思うぜ。
後は正直そこまでラペルに変化は無い。
強いて言うなら、サラマンダーが討伐された事により、再び冒険者ギルドに活気が戻って来てるって事か。
そのおかげで俺たちは今やラペルの英雄だ。
ま、どの道そう言われて悪い気がするやつは居ねぇわな。――っと、まぁこんな感じだ。じゃ、話を進めて行くかね。
「――で?なんなんだよ話ってのは。」
改めて言うが、今日俺たちは自ら冒険者ギルドに来たのではなく、呼ばれたのだ。
大体、今は特に危険なモンスターも出現していない今、俺たちが無理に討伐に行く必要も無いしな。
生活費の大半はウェーナに払ってもらってるし。
(そりゃお金は渡してるぜ?)
だから今日の朝もいつも通りに中庭で各自トレーニングをしていたんだ。
そんな時にウェーナから「冒険者ギルドに呼ばれてますよ」って言われたもんだから驚いたぜ。
すると、そんな俺のセリフに対して、お姉さんはふぅっと息を吐くとこう言い、1枚の紙を俺たちの方に差し出してきた。
「実は今朝、帝都ティルトルの冒険者ギルドから皆様宛に手紙が送られてきたんです。」
「……ッ!!」
帝都ティルトル。忘れるはずもないその単語をお姉さんの口から聞いた俺は、すぐに差し出された紙を手に取る。
するとそこにはこう書かれていた。
『お前らがファスティ大陸に戻ってからまた季節外れの、それも変異種モンスターがサラマンダーと同じくチュロント森で出現した。討伐は既に複数人の冒険者により完了したのだが、どうやら発見した冒険者曰く、そのモンスターのすぐ隣に白いローブを纏い、丸い赤色の宝石の様な物を手に持った人物がいたらしい。とにかく、まずは中央大陸まで来てくれ。』
「手紙を書いたのは――スザクか。」
あいつがこの手紙を書いたのなら、内容の信憑性は高そうだ。
そしてその手紙には「中央大陸まで来てくれ」しっかりとそう書かれていた。
「で、なんて書かれてたの?」
「俺もまだ詳しい事はよく分からないが、またサラマンダーみたいに季節外れの、それも変異種のモンスターが現れたらしい。」
「それで?」
「討伐は完了したが、とりあえず中央大陸まだ来て欲しいんだってよ。」
「なるほどな」
「じゃあ私たちまた中央大陸に行くのー?」
「あぁ、そうだな。――すまんお姉さん。俺たちこれから中央大陸に行ってくる。」
「……ッ!――わ、分かりました!ではこれから港に行く為の馬車を手配します!」
「おう、ありがとうな。」
こうして俺たちはラペルで変異種サラマンダーを討伐してから数日後、再び中央大陸の帝都ティルトルへ向かう事になった。
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それから数時間後、俺たちは帝都ティルトルまで行き、以前来た時もずっと利用していた冒険者ギルドに入った。
扉を開け、中に入ると、俺は相変わらずラペルの冒険者ギルドとは違い過ぎる建物の規模に驚きながらも手紙の差し出し主であるスザクを探す。
するとしばらく奥に歩いたところで、
「――あ!」
俺は壁際にある縦長の机に座り、何やら話をしているスザク、ミラボレア、そしてレザリオの姿を見つけた。