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第71話【覚醒〜新たなユニークスキル!?〜】


「ふッ!!」

「くっ......」


 俺は突撃してきた門番の、最初の一振りを咄嗟に剣で受ける。


 くそが……いきなり来やがって……

 ――だが、今の攻撃は迫力こそあったものの力やスピードではスザクに劣っている。

 そして俺はそんなスザクと勝敗は付かなかったものの一度真正面からやり合ったんだ……!

 これは――勝てるぞ……!


 だが、俺のそんな考えは甘かったと、すぐに思い知ることになる。


 すると次の瞬間、


「――なッ!?」

「フッ――はぁぁ!」


 俺の剣としのぎを削っていた門番の槍に紫色のオーラが纏われ、一瞬で押す力が倍増。

 すぐに俺は後ろへ吹き飛ばされた。


「くっそ……なんなんだよいきなり……」

「貴様は忘れたのか?我々が魔法を一番上手く操る事の出来る種族の「魔族」という事を。」


 そこで、そう不敵な笑みを浮かべながら紫色のオーラを纏った槍を持つ門番を見て俺は気付いたのだ。確かに帝都ティルトル剣術祭は俺に色々な経験、成長をくれたが、あくまでもそれは「ルールの中での試合」であり、そこでスザクと互角に戦えたからと言ってこの様なルールの無い試合で全て生かせる訳では無いという事を。


 あそこでは剣の部だと試合中の魔法使用は禁止だったが、今は遠慮なく使ってくるのか……!

 魔法を使う敵と戦って来なかったから忘れてたぜ。


「さぁ、貴様はどうする?」


 だが……だからって諦める訳にはいかねぇ!

 俺は色々背負って今ここに立ってるんだよ!


「決まってるさ……正面から斬り捨てるだけだッ!」


 そこで俺はすぐに立ち上がり、剣を構え直すと次はこちらから門番に突進して行った。

 だが、当然それに対して門番は得意の魔法で対抗をしてくる。

 槍を片手で持つと、空いたもう片手を俺の方に伸ばし、


ダークネスハンド闇の義手ッ!!」


 そう呪文を唱えた瞬間、伸ばしていた手から巨大な黒い闇の手が出現、こっちに向けて伸びて来た。

 しかし、


「ふッ!」


 その手を俺は寸前で左側に身体を傾け回避、寸前のところで避ける事が出来た。

 へッ、魔法を放ってくると分かった時点で簡単には当たらねぇよ!!


「はぁぁぁ!!」


 そして攻撃を回避した俺はすぐに剣を横構えに変え、門番の胴目掛けてそれを振るおうとする。――しかし、その寸前に自分の中でひとつの違和感が生まれた。


 それは――相手からしてみれば真正面からの魔法を回避され、完全に俺の攻撃範囲内に入っているという絶対的に不利な、次の1秒で勝敗が決まってもおかしくないというこの状況下で、全く焦っている表情をしていないと言う点だ。


 更に、その違和感は次の瞬間に確信へと変わる。


「――フハハ」


 なんとそこで門番は邪悪に笑ったのだ。

 ま、まさか――


「――ッ!?」


 そこで俺はすぐに門番への攻撃の手を止め、後ろを振り返る。

 するとそこには、今にも俺の身体を捕まえんとするダークネスハンド闇の義手があった。って!?


 ま、マジかよ……あの後、この闇の手は進行方向をすぐに変更し、俺の方目掛けて飛んで来ていたって訳か……!


 確かに、今思えば不思議な点はあった。

 正面から突っ込んでくる相手に対してなら、普通スピードの早い魔法を使うのが妥当なはず。なのに門番は進むスピードが早いとは言えない魔法を使った。


 その時点で俺は回避した魔法のその後もしっかり意識をしておくべきだったのだ。


「くっ……ッ!?」


 それに対して、何とか俺は盾で身体を守るが、ダークネスハンド闇の義手は盾にぶつかった瞬間に爆発。

 身体を弾けるように吹き飛ばし、更に盾を粉々に粉砕した。


「やはりその程度か、久しぶりの冒険者だからと期待した我が間違いだったな。」

「くっそ……」


 そこで、門番は呆れた表情でそう吐き捨てると地面にしりを着く俺に対してとどめを刺す為、片手を伸ばし魔法の呪文を唱え始めた。


「おいとうま!流石に次避けな死んでまうで!」

「おいとうま!」


 そんな俺にレザリオや仲間たちが声を掛け、しまいには決闘を止めようと背中から剣を引き抜こうとしだす、――が、それを俺は、


「手を出すなッ!これは俺と門番こいつの戦いだッ!」


 すぐにそう叫び一蹴した。


「フハハ、その度胸だけは認めてやろう……だが、だからって魔法の威力は下げんぞ。」

「上等だよ!」



 と、言ったのは良いが実際のところ俺は今絶対的なピンチだった。

 今の体制的に、例え立ち上がれたとしてもその動きが精一杯で、魔法を撃たれるとそれまでだろうし、だからと言ってカウンター技を俺は持っていない。


 ――あぁ、だめだ……全然いい案が思い付かねぇ……

 そして遂に、そんな俺に対して門番は魔法を放った。


「消えろ、闇の閃光ダークネスブラスター


 手から放たれた紫色の閃光は、俺目掛けてものすごいスピードで飛んでくる。


「くっ……」


 そこで俺は結局、盾を持っていた手を闇の閃光ダークネスブラスターの方に伸ばして受け止めようとするのが精一杯だった。


 すぐに身体全体を囲む紫色の光。

 あぁ、俺の冒険者人生は――いや、命はここで終わるのか。最後はこんなにあっさりいかれるとはな。

 ――でも、もう疲れた。ここまで頑張るなんて、らしく無かったんだよ。



『まだ終わらねぇぜ、とうま』


「――――って、あれ……俺……」


 しかし、俺はあの魔法を真正面から受けたにも関わらず、死んではいなかった。

 すぐに身体中を確認するが、傷1つすら付いていない。


 すると、そこで俺は伸ばしていた手にものすごいパワーが溜まっている感覚に気付く。

 すぐに手のひらを見ると、うっすらと紫色のオーラが全体に纏われていた。


「ま、まさかとうま……今の攻撃を全部手のひらで吸収したっちゅうんか!?」

覚醒ソウルブースト……話に聞いた事はあったがまさか……」


「なんだよこの力は……」


 俺、女の子に触れられた時にシールドを作るというユニークスキルは持っているが……力を吸収するユニークスキルなんて――はっ!!


 そこで俺は先日の変異種サラマンダー討伐を思い出した。

 あの時も、最後サラマンダーのブレスをシールドで守り切った後、背中を触っていたみさとたちにそのブレスの力が吸収された、という事があったのだ。まさか……今回もその力が……?


 だが、どの道今そんな事を考えている時間は無い。

 とにかく、目の前にいる門番を吹き飛ばす……ッ!!


「な……何が起きたというのだ……!?我の魔法が……」

「残念だったな、俺も負けたと思ったが、どうやら神がそうはさせなかったらしい。今回はこちらの勝ちだ!!」


 すぐに力の溢れる手を酷く混乱する門番の方へ伸ばすと、


「お返しだ!闇の閃光ダークネスブラスターッ!!」


 先程門番が放った魔法をそっくりそのまま返し、その閃光は一瞬にして相手の身体全体を包み込んだ。

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