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第72話【来者ノ石〜こいつが魔王......!〜】


「お、おい……どうなったんや……?」

「ッ!!あれをみろ!」


 俺は闇の閃光ダークネスブラスターを放った事でヒリヒリと痛む左手を下に下ろすと、閃光で見えなくなった門番がどうなったのかと、凝視する。


 するとそこには――


「く……」


 全身の鎧がボロボロになった、地面に片膝をつく門番の姿があった。

 って事は、今回の決闘の勝者は……!


「まさかその様な力を持っていたとは……良いだろう。お前たちを魔王様の元へ連れて行ってやる。」

「「よっしゃ!」」


 こうして俺は一度攻撃を当てられたらこちらの勝利というハンデはあったが、無事勝つ事ができ、魔王の元へ行く権利を獲得したのだった。


 ---


「この扉の先に魔王様は居る。くれぐれも無礼の無いよう頼むぞ。」

「あぁ、分かっている。」


 それから門番に連れられて魔王城に入った俺たちは、しばらく奥へと歩き、巨大な赤い扉の前に立っていた。

 道中に魔族はひとりも見かけなかったが、本当にこの扉の向こうに魔王が居るのだろうか?

 別にこの門番を疑っている訳では無いが、俺はまだ半信半疑だった。


 すると、そこで門番は軽く2回ノックをし、扉を開けた。

 そこには――


「――ん?どうしたのですかダリア。そのボロボロになった鎧は――それに、その後ろにいる人間たちも。」


 巨大な紫色の椅子に腰掛けた、年老いた魔族が居た。

 頭には大きなツノが2本。口からも八重歯が飛び出しており、黒いローブを纏っている。

 そして部屋の中には他にも、数人の魔族が壁際に置かれた椅子に腰掛けていた。


 正直、正面に座っている年老いた魔族は見た目だけで言うとお世辞にも「強そう」や、門番と対面した時の迫力、圧力は無い。しかし、その姿からは只者では無いオーラが漂っていた。

 まさか……この魔族が……魔王だっていうのか……!?


 もっと怖い感じだと思ってたぜ……


「はい、実は先程――」


 そこで門番――ダリアは、俺たちが今回魔大陸の魔王城に訪れた訳を魔王に説明をした。


「――なるほど。だから先程外で魔法が放たれる音がしていたのですね。」

「はい、すいません。この様な者たちに負けてしまい……」

「何を言っているのですか、負ける事は決して悪い事ではありません。そこからまた、成長していけば良いのですよ。」

「ありがとうございます……!」


「――あぁ、失礼。人間の皆さん。自己紹介をしていませんでした。私がこの魔族の頂点に立つ魔王です。」

「俺はスザクだ。こっちのやつは――」


 そこで俺たちも一通り自己紹介をする。

 やっぱり、俺が事前に思っていた様な奴じゃないな魔王は。

 すると、全員の自己紹介を丁寧に聞き終わった後、早速魔王が本題を切り出してきた。


「――で、今回皆さんが私に会いに来たのは、この大陸で住んでいるソルクユポの方々に付いて、何かおかしな動きをしていないか。という事を聞きに来たという事ですよね?」

「あぁ、そうだ。ここのところ中央大陸に立て続けに現れている季節外れの変異種モンスター、そいつらとソルクユポが関係しているのではないかと思っているんだよ。」

「何か知ってる事があったら、教えてくれへんか?」


 すると、それを聞いた魔王は腕を組みしばし考えた後、周りの魔族たちとも目を合わせ、それからこう言った。


「すいません、実は私たち魔族もソルクユポの方々と同じ魔大陸に住んでいる者ではあるのですが、ここ数年は愚か、数えていませんが恐らく数十年は交流をしていないのです。」

「ですから、皆さんが望んでいるような事を答えることは出来ません。」


 「恐らく我々には興味が無いのでしょう。昔から何をしているのか、全く分からない集団ですから、ソルクユポは。」魔王は最後にそう付け足し、口を閉じた。


「ほ、本当に何も分からないのか?なんでもいい!最近変な動きをしてるとか、中央大陸に行く姿を見たとかでも良いんだ!」


 まさかの収穫ゼロで終わろうとしている話し合いに、俺は必死でそう尋ねる。

 だってこんなので帰ったらほんとに無駄骨じゃねぇかよ!


 すると、そこで魔王の左側にいたひとりの比較的若い魔族が何かを思い出したかのように表情を変えると、魔王に近付き、耳打ちをした。


「――なるほど、ありがとうアザール。皆さん、どうやら最近、赤色の宝石――恐らく来者らいじゃノ石を持ち、中央大陸側の砂浜に歩いて行くソルクユポの方がいたらしいですね。」


 赤い宝石……ハッ!!


 『どうやら発見した冒険者曰く、そのモンスターのすぐ隣に白いローブを纏い、の様な物を手に持った人物がいたらしい。』


 という事はやっぱり、ソルクユポの人間が中央大陸で変異種モンスターを――


「それを見たのはいつくらいだ?」


 魔王の言葉を聞いたスザクは耳打ちをした魔族、アザールにそう聞く。


「数日前だな、城周辺のパトロールをしていた時に。砂浜はその時居た場所と比べて低いから良く見えたんだ。それで目に入った。でも、その時は別に何をしようとしているのか、なんて考えもしなかったよ。」

「そうか、ありがとう。――レザリオ、ミラボレア」

「あぁ、ビンゴみたいやな。」

「犯人はソルクユポの子でぇ、間違いないようねぇ。」


 よし!さっきはどうなる事かと思ったが、何とか情報を掴めて良かったぜ。ありがとよアザール!


「じゃあ、もう帰るか?スザク。」

「あぁ、そうするか」


 しかし、レザリオとスザクがそんな会話をしている横で、俺の頭の中にふとひとつの疑問が浮かんだ。

 それは――先程魔王のセリフの中で出てきた来者ノ石とは何なのかだ。


「なぁ魔王さん、ひとつだけ聞きたい事があるんだが、良いか?」

「なんですか?答えられる範囲なら大丈夫ですよ。」

「あの――さっきの会話で出てきた来者ノ石ってなんなんだ?」


 すると、その言葉を聞いた魔王は「あぁ、皆さんとは縁もゆかりも無い物だと思いますが、」そう先に言ってから、


「私も詳しくは知っていませんが、この世界とは違う世界から来た者から力を貰っている摩訶不思議な宝石で、その力を使いモンスターを召喚したりそんな異世界からの来者を元の世界に帰す事が出来る様ですよ。」

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