「とりあえず、今日の魔王の話で大体分かった。今中央大陸で起きている現象は確実にソルクユポが関係してるだろう。」
「だな。――――ふぅ……とりあえず何事も無く終わる事が出来て何よりだぜ。」
「今日はぁ、門番ちゃんとの戦いぃ、頑張ってたものねぇ」
ミラボレアは御者の席から、俺たちのいる荷台に向かってそう言う。
今はもう魔大陸から離れて、行きと同じ様に
「それにしても――あんな物があるなんて初めて知ったぜ。」
「来者ノ石だったかしら、あれの事?」
「あぁそうだ。――スザクはあの宝石の事、知ってたのか?」
「まぁ、だいぶ昔に魔大陸に渡った冒険者の書き残した書物を見て名前くらいはな。だが、今日の魔王の話でそれがどの様な物なのかは初めて知った。」
「ワイもスザクと同じや。大体この世界とはちゃう世界ってどういうことやねん。」
「全くねぇ」
「……ッ」
今、もし俺がこいつらに「俺たちは異世界から来たんだ」って言ったらどんな反応をするんだろうな?
――きっと今なら信じてくれる気がする。だが、それはなんだか今までみんなを騙していたみたいで、とても実際に口に出す事は出来なかった。
「魔王の説明を信じるなら、俺たちの居たラペルにも、他の世界から来た人が居たりするのかもな。」
---数十分前、魔王城にて---
「別の世界に人を返す?それにモンスターを召喚したりってそれどんな魔法やねん」
「正しくは魔法では無く、その石の力ですね。ソルクユポはその石を使って時々この世界に来者と呼ばれている異世界の人間を連れて来ている様ですよ。」
「なんでそんな事をしているんだ?」
「私たちも詳しくは分かりません。ですが、先程申し上げたモンスターの召喚をするにはとにかく他の世界から人を連れて来なければいけないみたいです。」
「なるほど……要するにモンスターを召喚する時に使う代償――生贄の様な物か」
---
という事は、俺たちがこの世界に来たのも、そのモンスター召喚の為の生贄って訳か……?
だが、今日聞いた話は全てソルクユポからでは無く、魔王からの情報だ。全ては信じ込まない様にしないとな。
要するに、謎は深まるばかりって訳。
すると、そこで一旦謎の宝石、来者ノ石の話題が止まった事を見計らっていたかの様にスザクが俺の方を向いてこう言った。
「――そんな事よりもだ、お前のユニークスキルにあんな力あったのか?シールドを形成する的なイメージだったのだが。」
あぁ、あれか。
確かに、スザクの言う通り俺はあんな力を吸収するみたいなユニークスキルは持っていない。
後半の話が色々と衝撃的だったから忘れてたぜ。――って、ん?
俺、こいつらにユニークスキルの話したか?まさか、みさと達が?
そこで俺は隣に座る3人の方を見るが、全員同じ様な顔で驚いている。あ、こりゃ誰も言ってねぇな。
なら、なんでその存在を……?
「な、なぁ……確かに俺にはあんな力無いが、なんでお前がユニークスキルの事を知ってるんだよ……?」
「ん?あぁ、なんでってお前らいつも話してたじゃないか。ユニークスキルが何とかって。なぁレザリオ。」
「あぁ、帝都ティルトル剣術祭ん時もお前ら叫んでたやないか、ユニークスキルが何とかって」
「た、確かに……」
思い返してみれば俺たちは「ユニークスキル」という単語をこいつらの前で何度も使っていた。
そりゃバレても仕方ないか、それに、隠しても無かったから別に良いしな。逆に説明が省けて良かったぜ。
「なら、別にもうユニークスキルの事は説明せず、本題から入る。スザク、お前は今回みたいな持ってない力が目覚めたりする事について何か知っていたりしないか?」
すると、それを聞いたスザクはしばらく腕を組んで考えた後に口を開き、ある単語を口にした。
「
「なんやそれ?そういやお前とうまが戦ってる最中にもそんな事言ってたな。」
「あぁ、
「とうま、あの力は本当にさっきが初めてなのか?正直あの決闘がそのきっかけだとは到底信じられん。それこそ人生を賭けた戦いや、
その言葉を聞いて、俺は先程の現象が
何故なら――ひとつ心当たりがあったからだ。
大切な仲間、エスタリを殺した変異種サラマンダーとの戦い。あの時俺は確かに背中を触っていたみさと達にブレスの力を分け与えていた。
きっとあれがきっかけだったのだ。
その事を話すと――
「――なるほど、そんな事があったのか。なら恐らく
「ええなぁ、ワイもユニークスキル欲しいわ」
「お前は無くても十分強いだろ」
「ん?なんやスザク、褒めてんのか?」
「って、おい!抱きついてくるのはやめろ!気持ち悪いな!」
「――ハハ」
とりあえず、今回手に入れた新たな力で仲間を、街の人達を守れるなら最高だな。
するとそこで、ミラボレアが口調は相変わらずおっとりしているが、何時もとは違うなんだが緊迫した声で、
「スザクちゃん、少しぃ、まずいことになってるわねぇ」