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第79話【悪魔〜魔大陸到着〜】


「着いたわぁ、ここからは何があるか分からないしぃ、走って行きましょうぅ」

「あぁ!ありがとう!早く降りるぞ!」


 ミラボレアの言葉と共に馬車が止まった瞬間、俺は勢い良く荷台から飛び降りると、背中から剣を抜く。


 魔大陸に来る時に見えていたあの無数に空を飛び回るモンスター、まずは今戦っているであろう魔族のところに行かないと!


「とうま!行きましょう!」

「行くぞ!」「うんうん!」

「あぁ、分かってる!スザク!レザリオ!ミラボレア!」

「分かってる、走るぞ!」

「っしゃ!行くで!」

「やるわよぉ」


 こうして俺たち7人は魔王城に向けて走り出した。



 それから数分後――


「――ッ!!現れたな!」

「キャッキャッキャ!!」


 薄暗い森を走り抜ける俺たちの前に、羽の生えたモンスターが現れた。

 こいつらか……!海を渡ってる途中に見えたモンスターは……!


 人型をしているそのモンスターは、全身が赤黒く、頭に黒いツノ、そして手に持った槍の様な武器。

 完全にファンタジー物や神話でよく見る悪魔そのものだった。


悪魔デビルか……俺も初めて見たぞ」

「そうなのか……?スザク」

「あぁ、こいつも漆黒龍ブラックドラゴンと同じく誰かが創った創作上だけのモンスターだと思っていたからな。まさか居るとは……」


 すると、そうしている間にも悪魔デビルはどんどん俺たちの方に集まっていき、気が付くと周りを囲まれてしまっていた。


 くそ……これじゃ魔王城に着くのが遅れてしまう……

 今回の戦いは、漆黒龍ブラックドラゴンが召喚されるまでにソルクユポの頂点、エイブ・シュタイナーを倒す事が勝利条件。だからこんなところで油を売っている訳にはいかないのだ。


「とりあえず……俺たち4人は行く手を阻んでいる正面の悪魔デビルを殺る、スザクたちは後ろのやつらを倒してくれ。道が空いたら声を掛ける。」


 俺は足りない頭で考えた、考えうる限りの最善策を口にする。

 しかし、そこでスザクは――


「いや、その必要は無い。俺とミラボレアでこいつらを止める。お前らはレザリオと共に先へ行け。」


 十文字槍を縦に1周グルリと回し、構えた。

 それを見たミラボレアも同様に、


「そうねぇ、この勝負は時間との戦い。5人は先に行きなさいぃ」


 って、いやそれは1番無い選択だろ!!

 ただでさえ目の前にいるモンスターはどれだけの力を持っているか分からない状態で、2人だけでそいつらを足止め……?死亡フラグがビンビンだろそれは……


「いや、それはまずいだろ!そんな事したらスザクたちが――」

「いや、従うべきやな」

「レザリオ……?」

「ミラボレアの言う通り、これは時間の勝負。何時までもここで足止めくらうんは1番キツい。」

「それは、仲間ふたりを犠牲にしてもの話しか……?」


 言い方は悪いかもしれない……だが、今ここでその判断をするのはそれに等しい。

 しかし、そんな俺のセリフにもレザリオは顔ひとつ変えずにこう言い切った。


「あぁ、せや。なんでも世界中の人間の命が懸かってるんやからな。」

「……ッ!!――分かった。」


 正直、もうここまで言い切られたら従うしかない。

 レザリオは俺たちよりもずっと長い事冒険者をしてる人間だからな。

 だから――今俺たちがスザクとミラボレアに言える言葉はひとつだけ。


「――お前ら、絶対死ぬなよ!魔王城で合流だ!」

「ハハ、上級冒険者の生死を心配するか、お前は。上級冒険者俺たちを舐めるな、そんな事当たり前だ。」

「よし、じゃあ走るぞ!魔王城はもう少しだ!」


 そうしてスザク、ミラボレア以外の俺たち5人は走り出す。


「キャッキャッキャ!!」


 悪魔デビルはそんな俺たちを通すまいとすぐに正面の道を塞いでくるが――


蒼炎の雷ライジングファイア

「キャキャキャ!?!?」


 ミラボレアの放った魔法により一瞬で塵になる。


「早くぅ、行きなさぁい。」

「すまん!ありがとう!」


 俺たちが魔王城を目指して走る中、残ったふたりは悪魔デビルに囲まれながら、必死に戦っていた。


 ---


 それからどれだけ走っただろう、俺たち5人はやっと魔王城に着いた。


「やっとだ……よし、入るぞ!」

「えぇ」「おう」「うん」

「でも、やけに静かやな。」


 そこでレザリオは両手を腰に当て、周りを見渡しながらそう言う。

 確かに、物音も全然しないし、不気味なくらい静かだった。

 しかし、地面にはいくつもの血痕。戦闘の跡はある。


「とにかく、魔王に会って今の状況を教えてもらおう。」


 こうして俺たちは魔王城の正面入り口を開けると、中へ入った。



 それから中に入り、しばらく奥へと歩くと、数日前に入ったばかりの赤い扉が目の前に現れる。

 (この先に、魔王が……)


「開けるぞ……」


 とにかく今は、緊張などしている場合では無い。

 俺はすぐに扉の取っ手を握ると、勢いよくそれを引き、中へと入った。


「大丈夫か!?――――って、……ッ!?」

「おぉ、来て下さいましたか。」


 そこで俺たちの目に入って来たのは、怪我をして血を流しながら壁へ持たれかかっている魔族と、それを必死に治癒魔法で直そうとしている魔族の姿だった。


「こ、これは……」

「すいません、我々も必死に戦ったのですが、もう戦力があまり足りなくて……途中で引き上げて今城に立てこもっている状況です。」


 するとそんな状況を見てレザリオは「おいとうま」そう言ってから一言。


「かなりまずいかもしれへんで。」

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