「とりあえず、今の戦況を説明してくれ」
「はい。まず、これは今言いましたが我々魔族にはもう戦力はあまり残されておらず、皆さんの力になれるかは分かりません。」
「本当に申し訳ない」そう言い、俺たちの方へ頭を下げる魔王。
「いやいや、十分頑張ってくれた思うで。さすがにあんなやつら相手にしとったらこうなるわな。」
「――すいません。ですが、我々にも魔族のプライドがあります。おそらく今
「ちょっと待て。という事は、もうソルクユポの本拠地、分かってるって事か?」
そこで俺は魔王にそう聞く。
もしそうだとしたら、これは大きいぞ……!
ずっとどこが本拠地なのかも分からずだったから、突撃する時も手探りだと想定していたが、これなら最短ルートで行ける……!
すると、その俺のセリフを聞いた魔王は、
「はい、私がこの目で見たという訳ではありませんが、城外で戦闘をしていたダリアが見たと言うので間違いは無いかと。」
そう言い、張本人のダリアを呼び、横に連れて来る。
その魔族は、なんと俺が城前で決闘をした魔族だった。
もう既に身体に纏った防具は所々が破壊されてはいるが、周りの負傷した者に比べたらまだマシな方だ。
魔王の横に立ったダリアはそうして俺たちに説明を始める。
「先程、我は傷を負うまで前線に出て
「あること?」
「あぁ、それは
「召喚……!」
という事は、エイブ・シュタイナーもそこに……!!
ならば、今すぐにでも現地へ向かった方が良いだろう。きっとこうしている間にも
召喚されたらもうどうする事も出来ない、待っているのは全員の「死」だからな。
「ちなみに、その方向ってのはどっちなんだ?」
俺はダリアにそう尋ねる。
するとダリアは俺たちから見て右方向を向き、「貴様らは知らないと思うが、」そう言ってから説明し始めた。
「我々魔族は先程まで、この城を正面から見て右側にある大きな平原で
「なるほど……その石の場所は祭壇か何かなのか?」
「いや、という訳では無いが――」
するとそこで、俺の質問に対して話に入って来たレザリオがこう答えた。
「石ってのはな、木や土と違って魔法陣が描きやすいんや。やからやろな」
「魔法陣……そんな大掛かりな事を……?」
「多分な、ほんまに
どの道やばそうだな……
さっきからずっと「俺はそんなにえげつない奴と戦おうとしてるのか」そう思いっぱなしだ。
だってよ、数ヶ月前までは平和な別の世界にいたんだぜ?俺たち。みさとちなつくるみも話について行けてなくてまるで空気と化してるし。
だが、今はそんな事言ってる時じゃねぇよな
「――ありがとな、ダリア。」
「ふっ、気軽に我の名を呼ぶな」
へへ、このツンデレ魔族がよ。
「じゃあレザリオ、今すぐその平原まで行くぞ」
「……ッ!やっぱ今すぐ止めに行くべきやでな」
「?こんな時になに迷ってんだよレザリオ。この戦いは一刻を争う――」
「ねぇとうま」
するとそこで、ずっと黙っていたみさとが俺の手を掴んだ。
「なんだよ」
「ごめん、私にはこの戦い、やっぱりさっぱり分からないわ。でも、私たちをこの場所まで繋いでくれたスザクたちがこっちに来てからにしない?」
「……ッ!!」
そこで俺もこの場所まで命を賭けて繋いでくれたスザク、ミラボレアの事を思い出した。
そうか……だからレザリオも少し様子が変なのか。
でも、あの2人は俺たちを何故この城まで早くたどり着かせてくれた?一刻も早くエイブ・シュタイナーの企みを止める為だろ……!だからここで2人が来るまで待つなんてのは2人も絶対望んでない!
俺はその事をみさとやレザリオに伝える為、口を開こうとする――瞬間、部屋の扉が勢い任せに開けられた。
そこで室内に居た全員音に反応して開けられた扉の方を向く。
するとそこには――
「すまんお前ら……少し食らった……」
「とりあえずぅ、さっきの奴らは全滅させたけれど、今すぐエイブ・シュタイナーを止めに行かないとぉ、いつ召喚されてもおかしくないわぁ。」
口調こそいつも通りだが、表情が明らかに焦りと怒りの混じっているミラボレアと、左肩から血をドバドバと流し、膝から地面に倒れ込むスザクの姿があった。