「すまん……少し食らった……」
「お、おいスザク!?大丈夫か?ミラボレア!一体何があったんや!!」
扉を開け、中に入った瞬間に地面に膝から崩れ落ちたスザクにレザリオはすぐに駆け寄ると、一緒に入ってきたミラボレアに向かってそう言う。
「レザリオ……ミラボレアが悪いわけじゃない、本当に俺が軽いヘマをしただけだ。それにまだ槍を持つ方の腕は動く。」
「ちょ!おいアホ!?変に立ち上がろうとするんやない!おいとうま!止血出来るもんはないか!?」
「……ハッ!!」
そこで、いきなりの出来事に放心状態になっていた俺は我に返った。
――クッソ……なにビビってんだよ俺……まさかあのスザクが怪我を……?って現実逃避しようとしてるってのか……?
最初から分かっていたはずなのに……今回の相手はレベルが違うって。
――くそ……とりあえずは言われた通りに止血だ!
俺はすぐに振り返ると、魔王に包帯は無いか聞こうとする。――が、その前にくるみがこちらへ駆け寄って来て、腰に付けていた小さなバックから包帯を取り出し、それを渡して来た。
「とうま!これを使って!」
「おぉ!まさか持って来てたのか!」
「うん、だって私たちはここに居る他のみんなと違って力になれるかどうか分からない状況なんだよ?だから出来る限りの事はしたいんだ!」
「くるみ……!」
――――はッ!なら!
「それなら!その包帯にくるみのユニークスキルを使って、能力を上げる事は出来ないか!」
「え、えぇ!?――で、出来るとは思うけど……私のユニークスキル……分かってるよね?」
「あぁ、半分の確率でそれがものすごく悪くなるか良くなるか、だよな?」
「う、うん」
正直、この行動は結構な賭けだ。
もし悪い方に作用するとスザクの怪我が更に悪化するかもしれない。――だが、だからと言ってこのままではとてもエイブ・シュタイナーを倒す事は出来ないだろう。
「スザク、良いか?」
「あぁ、頼む。」
スザクからも了承を受けると、俺は再度くるみに目線で促す。
それに対してくるみは、覚悟を決めた様な表情になると、スザクに近付き、負傷した左肩に包帯を巻き始めた。
そして巻き終わると――
「じゃあ、使うよ……?」
「あぁ、頼む。」
包帯の巻かれた左肩に手を当て、目を瞑った。
すると次の瞬間、スザクの身体全体を黄緑色の優しい魔力が包み込み――それが消えるとスザクの身体の傷は全て消えていた。
「――こ、これは……!」
「「成功だッ!!」」
「やった……!とうま!私やったよ!」
「あぁ、良くやった!」
前も何度か言っているが、俺は神なんて信じない。だが、今だけは感謝するぜ神様!!
「俺の身体の傷が全て消えたぞ……!くるみ、本当にありがとう」
「ほんまに大丈夫なんか……?全部治ってしもたんか……!」
「あぁレザリオ。心配をかけさせたな」
「し、心配やて!?別に心配なんかしてないわ!――そんな事より、今すぐエイブなんちゃらのとこに向かった方がええんやろ?ワイらもさっきまでスザクらが来たら行くっちゅう話になってたんや」
「そうなのか、なら――行くぞ!外は敵がどんどん増えて来ている!おそらくエイブ・シュタイナーが本格的に
「よし!俺たちも覚悟を決めて行くか!レザリオやスザク、ミラボレア程は活躍出来ないかもしれねぇが、やれるだけやろうぜ!」
「えぇ!」「だな!」「うん!」
すると、そこでそんな俺たちに魔王が椅子から立ち上がり、こう言い放った。
「ならば、我々魔族も協力しましょう。正直戦力はあまり残っていませんが、道を切り開く程の事は出来ます。」
「ま、まさか魔王様!?貴方が魔法を放つおつもりなのですが!?」
「当然です。私の可愛い手下がやられているというのに、先頭に立たない長がどこにいますか。」
「な、ならば、我々も……最後の力を振り絞ります……」
すると、その魔王の言葉で深手を負い、もう動けないはずの魔族たちも立ち上がり、各自雄叫びを上げ始めた。
マジかこいつら……!よし!戦力は増えれば増えるだけ良い!いっちょやってやろうじゃねぇか!
「よし!冒険者・魔族連合隊!!目標はエイブ・シュタイナーの企み――
いつも感情を出さないスザクもこれにはニヤリと笑い、拳を突き上げそう叫ぶ。
「「うぉぉぉぉぉぉ!!!」」
こうして俺たちは、城から出て、エイブ・シュタイナーを目標に最後の戦いを始めた。
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それから俺たち一行は、エイブ・シュタイナーが居るであろう石の祭壇(仮)を目指す為、まずは城の右側にある草原を目指す事にした。――――のだが、
「――な、!?」
「キャッキャッキャ!!」
なんと俺たちが城から出た瞬間、目の前には何体もの
くっそ、いきなりかよ……!?
っていうか、さっきミラボレアが言ってた通りマジで数めちゃくちゃ増えてるじゃねぇか……
するとその時、俺たちの後ろに続いていた負傷した魔族たちが前に出た。
そして、
「魔王様、ここは我々が請け負います。魔王様は冒険者たちと共にエイブ・シュタイナーの元を目指して下さい。――はぁぁぁ!!」
前に出た魔族のひとりであり、城の門番をしていたダリアが
「お前ら……」
もしかしたら
魔王や俺たちを前に進ませる為、自己を犠牲にする――か。
「……ッ!!行くぞみんな!」
「当たり前だ!」「走るで!」「えぇ!」
なら、ここは一緒になって
ダリア、そして魔族のみんな……本当にすまない、ありがとう!!
こうして俺たちは城ぞいを走り、草原を目指した。