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第82話【魔王の一撃〜いや、やば過ぎだろ〜】


「――はぁはぁ、とりあえず目指していた平原に出たみたいだな……」


 城の前に待ち構えていた悪魔デビルたちを負傷した魔族たちに任せた俺たちは、城ぞいに北方向へ走ること数分。

 まずは薄暗い森を抜け、エイブ・シュタイナーが居るであろう平原へと出た。


 しかし、だからと言ってすぐにそこへは向かわせてくれないみたいだな。


「「キャキャキャ!!」」

「クッソ、お前ら!相当な数やでこりゃ!」

「そんなの言われなくても分かっている!全員武器を抜け!」


 森を抜け、平原に出た俺たちを待っていたのは何十体もの悪魔デビルたちだった。

 こいつら……ここに来るまで走ってる時は全く姿を表さなかったからまさかこっち側にはいないのかなんて考えをしたりもしたが、やっぱり待ち構えてやがったんだな……!


 そして更に、そんな悪魔デビルたちの中には――


「「グウォォォォォォ!!」」


 緋色の翼を持った火竜や、口から緑色の液体を垂らしながら咆哮を上げる毒竜。大きな羽に水を纏う水竜なども居た。


「こりゃ、そうとう時間吸われそやな……」

「無視をしたいところだけどぉ、この数じゃそうもいかなそうねぇ」


 だが、これで確信したぜ。こいつらがこんなに行く手を阻んで来てるんだ、確実にエイブ・シュタイナーはこの先に居る……!


 とにかく、まずはこいつらを一瞬で蹴散らしてやるッ!!


「俺たちも構えるぞッ!」

「えぇ!」「おう!」「うん!」


 スザクたちに続いて、俺たち4人も何時でも戦闘を開始出来るように各自武器を構える。――――が、


「皆さん、その必要はありません」


 そんな俺たちに、魔王はその一言で武器を下ろさせた。


「おいおい魔王さん?目ぇ付いてないんか?目の前に敵がめちゃくちゃおるやないか」

「分かっています。だが、ここで皆さんの体力が削れるのは惜しい。ですから、ここは私に任せて下さい。」

「「……ッ!!」」


 魔王のそのセリフの瞬間、俺の背中に今まで感じた事の無いレベルの悪寒が走った。


 な、なんだ今のは……まさか今の魔王の一言で俺の身体が怯えたってのか……?

 だが分かる、今の魔王あいつの前に立った者に待っているのは「死」だけだ。


 前にスザクとは帝都ティルトル剣術祭の時に対峙した事があったが明らかにレベルが違う。――これは、


「――分かった。ここは任せる。――お前ら、俺たちは後ろに下がるぞ。」


 状況的に任せるしか無かった。


「まぁスザクが言うんやったらしゃあないな。ここはあんたの実力見させて貰うで。」

「ありがとうございます。」


 そうして俺たちは魔王の後ろに下がる。

 するとその瞬間、魔王は左手を悪魔デビルたちの方へ伸ばすと、空中に巨大な紫色の魔法陣を浮かび上がらせる。


 そして、


「我、現世の魔王なり。」


 何やら呪文を唱え始めた。

 だが、普通に考えてそんな隙ありまくりの時に相手が動かない訳が無い。


 だからそんな魔王に対して悪魔デビルたちは――――動かなかった。


「お、おい……なんで相手の奴ら、あんなに無防備な魔王に対して攻撃しないんだよ……」


 俺は口から言葉がそう漏れる。するとそれに対してはスザクが感嘆の声色で答えた。


「いや、あれはしてないんじゃない。出来ないんだ。悪魔たちあいつらはあの状態の魔王の前ではその圧で動く事は出来ない。要するに、もう決着は着いてるって事だな。」


「全く、話には聞いていたがとんでもないやつだ。」若干引きながらそう最後にスザクは付け加える。

 いや、なんだよそれ……いくらなんでもそんなの強過ぎるだろうが……


「お前たちは現世の王である我に立ちはだかった。その行動、万死に値する。」

「我が裁きの雷でその身を焼き尽くせ、」

終焉告げる魔王の一撃ロヴィーナ・フィーニスッ!!」


 そしてその瞬間、魔王が浮かび上がらせた巨大な魔法陣から紫色の光が放たれ、悪魔デビルたちの身体を一瞬にして飲み込んだ。


 ---


「――な、なん、だと……!?」

「いや、これはさすがに、」

「強過ぎだろ……」


 それから、魔王の放った一撃の光が消えた後、俺たちは正面を向く。

 するとそこには先程行く手を阻んでいた悪魔デビルたちは愚か、草花の生える地面も酷くえぐれていた。


 これは……やり過ぎだろ……

 ってかあのドラゴンたちも一撃で消し去っちまったってのか?さすが魔王様だな。


 だが――


「ぐはぁ……はは、私も酷く衰えましたね……魔力も昔と比べると随分落ちたものです……」


 その一撃を放った魔王も、地面に膝から崩れ落ちた。


「……ッ!大丈夫か!」


 そんな魔王に俺たちはすぐさま駆け付ける。


「皆さん、私の心配をしている時間なんて無いですよ。早く先へ進んで下さい……私はこれから来た道を戻り、城前に居る悪魔デビルたちを片付けにいきます……」

「なっ!?何言ってんだよお前!一緒にエイブ・シュタイナーを倒しに行くぞ!」

「すいませんが、それは出来ない。何故ならもう私に先程の魔法を放つ力などどこにも残っていませんから。行ったところで足でまといになるだけだ――それに、城前に残した可愛い手下をやすやすと悪魔デビルごときに殺させませんよ……」

「……ッ!でもよ、!」


 だが、そんな俺をスザクは制止して、


「やめろとうま。魔王の行っている通りだ。外傷こそ無いが、魔王自体もう相当な歳だ、魔力は少しも残っていないだろう。それに、俺たちにこんな事をしている時間は無い。」

「――分かったよ。」

「スザクさん、ありがとうございます。必ずやエイブ・シュタイナーの企みを阻止してください。」

「あぁ。――よし!道は魔王の一撃で開かれた!進むぞ!」

「よっしゃ!やったるで!」


 俺たちはみんなの意思を継いでるんだ……エイブ・シュタイナー、必ずやお前を倒すッ!!

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