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孫皓1  呉国盛んなれ

孫皓そんこうさま、丞相の陸凱りくがいに尋ねる。


「なぁなぁ、いまこの国に

 すげえ奴ってどんくらいいる?」


陸凱が回答する。


「そうですね、大臣に二人、

 諸侯に五人、将軍に十人余り、

 と言ったところでしょうか」


孫皓さま、喜ぶ。


「そんなにいるのか!

 この国はますます盛んだな!」


それを聞いて陸凱、思わずツッコんだ。


「盛んってどういう状態でしょうか?

 例えば賢君に臣下が忠義を尽くす。

 これが、国が盛んである状態。

 また父が子を慈しみ、子が孝行する。

 これが、家が盛んである状態です。


 翻って、我が国はどうでしょうか。

 まつりごとは行き届かず、

 民は疲弊の極みにあります。

 いつ転覆してもおかしくないですよ。

 この状態にあっては、口が裂けても

 盛んだなどとは申せません」




孫皓問丞相陸凱曰:「卿一宗在朝有幾人?」陸答曰:「二相、五侯、將軍十餘人。」皓曰:「盛哉!」陸曰:「君賢臣忠、國之盛也;父慈子孝、家之盛也。今政荒民弊、覆亡是懼、臣何敢言盛?」


孫皓は丞相の陸凱に問うて曰く:「卿が一に宗ぜるは朝に幾人在らんか?」と。陸は答えて曰く:「二の相、五の侯、將軍に十餘人あり」と。皓は曰く:「盛んなるかな!」と。陸は曰く:「君が賢たれば臣は忠にして、國は盛んなり。父が慈まば子は孝にして、家は盛んなり。今、政は荒れ民は弊れ、覆亡を是れ懼る、臣にては何ぞ敢えて盛んなりと言わんか?」と。


(規箴5)




孫皓

皓って「光り輝く」的な意味なんだけど、どうも先に孫皓を知っちゃうと「酷」時に見えて困っちゃうんですよね。世説新語でも原則オモシロキャラですし。困ったもんです。


陸凱

陸遜りくそんの一族、と言われているが、つながりは不明。けど丞相にまで至ってるので、陸氏の中でも相当に有力な人物なんだろう。この辺りは今後、墓誌とかで解明されていくのかな。とりあえずこのエピソードは、孫皓との関係を端的に表現したものとして認識できるだろう。孫皓から疎まれていたが、生前の更迭は叶わなかったのだ(そのかわり死後に家族が僻地に飛ばされている)。つーかこんなんダイレクトに言えば速攻首飛ぶわな。


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