「なぁなぁ、いまこの国に
すげえ奴ってどんくらいいる?」
陸凱が回答する。
「そうですね、大臣に二人、
諸侯に五人、将軍に十人余り、
と言ったところでしょうか」
孫皓さま、喜ぶ。
「そんなにいるのか!
この国はますます盛んだな!」
それを聞いて陸凱、思わずツッコんだ。
「盛んってどういう状態でしょうか?
例えば賢君に臣下が忠義を尽くす。
これが、国が盛んである状態。
また父が子を慈しみ、子が孝行する。
これが、家が盛んである状態です。
翻って、我が国はどうでしょうか。
まつりごとは行き届かず、
民は疲弊の極みにあります。
いつ転覆してもおかしくないですよ。
この状態にあっては、口が裂けても
盛んだなどとは申せません」
孫皓問丞相陸凱曰:「卿一宗在朝有幾人?」陸答曰:「二相、五侯、將軍十餘人。」皓曰:「盛哉!」陸曰:「君賢臣忠、國之盛也;父慈子孝、家之盛也。今政荒民弊、覆亡是懼、臣何敢言盛?」
孫皓は丞相の陸凱に問うて曰く:「卿が一に宗ぜるは朝に幾人在らんか?」と。陸は答えて曰く:「二の相、五の侯、將軍に十餘人あり」と。皓は曰く:「盛んなるかな!」と。陸は曰く:「君が賢たれば臣は忠にして、國は盛んなり。父が慈まば子は孝にして、家は盛んなり。今、政は荒れ民は弊れ、覆亡を是れ懼る、臣にては何ぞ敢えて盛んなりと言わんか?」と。
(規箴5)
孫皓
皓って「光り輝く」的な意味なんだけど、どうも先に孫皓を知っちゃうと「酷」時に見えて困っちゃうんですよね。世説新語でも原則オモシロキャラですし。困ったもんです。
陸凱