ある宴会の場で
「南国の詩風は、こちらに較べると
あけっぴろげだそうだね。
なんでも君、お前、と
相手に向けて呼びかける
詩があるそうじゃないか。
いきなり作ってみてくれ、といったら、
さすがに無茶振りすぎるかな?」
この時孫皓は酒を飲んでいた。
なので武帝に酒を進めつつ、
見事に読み上げる。
「前はお前の隣人だったが、
今はお前の臣下となった。
ひとつ、お前に酒をすすめよう。
お前の国に、万年の栄えあらんことを」
いや確かに詠んでみろって言ったけどさ。
公衆の面前で、仮にも皇帝を
「お前」呼ばわりかよ。
けど言い出しっぺは武帝だ。
咎め立てるのは筋が通らない。
軽々しい挑発をしたことを、
武帝は悔いるのだった。
晉武帝問孫皓:「聞南人好作爾汝歌、頗能為不?」皓正飲酒、因舉觴勸帝而言曰:「昔與汝為鄰、今與汝為臣。上汝一桮酒、令汝壽萬春。」帝悔之。
晉の武帝は孫皓に問うらく:「南の人は爾汝歌を作るを好むと聞く。頗るに為すは能わざるか?」と。皓は正に酒を飲み、因りて觴を舉げて帝に勸めて言いて曰く:「昔は汝を鄰と為し、今は汝の臣と為る。汝に一桮の酒を上ぐ、汝に萬春の壽なさしめん」と。帝は之を悔う。
(排調5)
晋武帝