だが嵆康、その話を聞くと、激憤。
おれは官途になんぞつきたくないのだ、
これまで竹林で交わった時に
さんざん言っていたではないか。
なのに、あぁくそ、まさかお前さんも
結局おれをそんな目で見るのか。
嵆康、山濤に絶交書を突き付けた。
「おれは世俗には耐えられんよ。
浅はかに世になぞ飛び出しておれん」
この絶交書に見えるような、
現政権ファックのスタンスが、
やがては嵆康の命を奪うに至る。
そして、あとには
息子の
あの嵆康の息子と言う事で、
出世の前途を断たれていた、かれ。
そんなかれを、山濤は推挙する。
官位は、
国家の公文書の管理を司る、
重要なポジションだ。
え、私などにそんな過分な推挙を。
よろしいのですか?
嵆紹は聞いた。
すると山濤は答えている。
「あなたに見合った肩書を、と
ずっと考えていたのだよ!
なに、天地ですら
四季に応じて姿を変えるのだ。
人の気持ちとて、また
移り変わるものであろうよ」
山公將去選曹,欲舉嵇康;康與書告絕。
山公の將に去りて曹を選ぜんとせるに、嵇康を舉げんと欲す。康は書を與え絕を告ぐ。
(棲逸3)
嵇康被誅後,山公舉康子紹為秘書丞。紹咨公出處,公曰:「為君思之久矣!天地四時,猶有消息,而況人乎?」
嵇康の誅さる後、山公は康が子の紹を舉げ秘書丞と為す。紹は公に咨りて處りて出づれば、公は曰く:「君が為に之を思うこと久しかりき! 天地の四時にて、猶お消息を有す、況や人をや?」と。
(政事8)
與山巨源絕交書
https://core.ac.uk/download/pdf/33468088.pdf
全文及び訳と丁寧な解説がこちらにあります。そのあらましをザルにまとめれば上で語ったような内容になるわけです。全文は紹介するにはヘヴィすぎるので皆様でご確認くださいな。
それにしてもここの山濤があまりにもエモすぎてつらい。