西晋の呉制圧にて大功を挙げた、
その妻、
なかなか見つからない。
やがて、雑兵の家系の者に俊才を見つけた。
この者であれば婿にふさわしいのでは、
そう思い、鍾琰に持ち掛ける。
すると鍾琰は言った。
「その才が素晴らしいものであれば、
家門のことなど忘れても構いません。
ただしその者と、先に会わせておくれ」
さて王済、自分の選抜眼に自信がある。
なので他の雑兵たちと一緒に、
婿候補を紛れ込ませた。
で、マジックミラーの向こうから
鍾琰に婿候補を
当ててみてください、と言う。
「これこれこういう
背格好の者でしょう?」
鍾琰、余裕で正解。
おっほうとなる王済だが、
しかし鍾琰は言う。
「なるほど、才能だけなら
令淑にふさわしいようね。
でもね、済。
微賤の出の者は、栄達に
ものすごく時間がかかるわ。
あの者は気骨こそ秀でているものの、
まず長生きは叶いません。
となると、あの子のためにも、
彼との結婚は認められないわ」
王済、大人しく鍾琰の言葉に従う。
そしたらもと婿候補氏、
本当に数年後に死んだ。
王渾妻鍾氏生女令淑,武子為妹求簡美對而未得。有兵家子,有雋才,欲以妹妻之,乃白母曰:「誠是才者,其地可遺,然要令我見。」武子乃令兵兒與群小雜處,使母帷中察之。既而,母謂武子曰:「如此衣形者,是汝所擬者,非邪?」武子曰:「是也。」母曰:「此才足以拔萃,然地寒,不有長年,不得申其才用。觀其形骨,必不壽,不可與婚。」武子從之。兵兒數年果亡。
王渾の妻の鍾氏は女の令淑を生み、武子は妹が為に美對なるを簡び求めど未だ得ず。兵家に子有り、雋才を有さば、妹を以て之に妻せんと欲す。乃ち母は白いて曰く:「誠に是れ才者なれば、其の地は遺るべかりけど、然して要うるに我に見さしめん」と。武子は乃ち兵の兒を群なる小雜に處らしむれば、母をして帷中より之を察さしむ。既にして而れば、母は武子に謂いて曰く:「此の衣形の如き者、是れ汝が擬せる所の者に非ざるや?」と。武子は曰く:「是なり」と。母は曰く:「此れの才は以て拔萃せるに足らん、然れど地の寒なれば、長年有らざれば、其の才用を申ぶるに得ざらん。其の形骨を觀るに、必ずや壽ならず、婚に與うべからず」と。武子は之に從う。兵の兒は數年にして果たして亡ぶ。
(賢媛12)
鍾琰
王令淑
うるせーよ「令淑」がこの子の諱じゃなくて形容だってことくらいわかってるよ。けどこんだけ名前残ってないと少しでも名前で呼んでやりたいじゃんよ。まぁ当時の忌諱文化から考えれば、むしろこの振る舞いの方が無礼なんだけど。
しかしそうやって考えると全然諱の残らない女性たちって、家の中でそれだけ大いに尊重されてたって考え方もできそうだなー。「絶対に諱は知られないようにする」と男たちに徹底的に守られていた、的な。