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和嶠   北夏門に臨む

西晋せいしん武帝ぶていに仕えた気骨の人、和嶠わきょう

かれの友人に、任愷じんがいという人がいた。

元々ブイブイ言わせていたのだが、

よりによって賈充かじゅう

仲違いしてしまったため、失脚。


元々は厳しく身を律していた人なのだが、

失脚以降、贅沢三昧。その身を持ち崩す。


その頽落ぶりを見たある人が、

和嶠に向けて聞く。


「君はどうしてかれの落ちゆくさまに

 手を差し伸べようとしないのだ?」


和嶠は答える。


「任愷は北夏門ほくかもんのような男。

 そう、洛陽らくようの北にある、

 あの立派な門だよ。


 いま、あの門が、自らの意志で

 崩れ落ちようとしているのだ。


 それを木の枝一本ごときで、

 どう留められると思う?」




 任愷既失權勢,不復自檢括。或謂和嶠曰:「卿何以坐視元裒敗而不救?」和曰:「元裒如北夏門,拉(手羅)自欲壞,非一木所能支。」


 任愷は既に權勢を失わば、復た自ら檢括せず。或るもの和嶠に謂いて曰く:「卿は何ぞを以て元裒が敗を坐視し救わざるか?」と。和は曰く:「元裒は北夏門が如し、(手羅)拉と自ら壞るるを欲したれば、一なる木に能く支うる所に非ざるなり」と。

(任誕16)




任愷

賈充の手にかかって司馬炎から疎まれるようになったってんですから、変に手を差し伸べれば道連れになる可能性もありますですわね。和嶠はそのへんのパワーゲームに配慮したのか、あるいはもうかれには好きに生きてほしいと思ったのか。いろんな解釈のしようがあるお話だなーと思うのでした。

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