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司馬越2 東海王三才

司馬越しばえつの配下には三人の俊才がいた。


ひとりは劉輿りゅうよ

実務に才を示した。


ひとりは藩滔はんとう

典礼知識は随一であった。


ひとりは裴邈はいばく

その清廉さには定評があった。



ほうほう。

では実際に彼らを見てみましょう。

劉輿については前話で見た通り。



藩滔。

幼き王敦おうとんにこんなことを言っている。


「お前の目つき最悪だな。

 幸い、まだ山犬みたく

 ギャンギャン吼えたりは

 してねえようだが。


 おい山犬。

 お前、人を喰う事になるだろうが、

 そのあと人に食われるだろうよ」


東晋樹立までに多くの「人を喰い」、

けど最終的には帝に嫌われ、

そして明帝に「食われ」ましたね。


それにしてもひでえ言い草だ。



裴邈。

王衍おうえんと、とにかく反りが合わなかった。

なのでどうにかして王衍のことを

屈服させてやろうと思っていたが、

どうにもうまくいかない。


なので、遂には王衍の元に出向き、

人々の前で散々に罵りまくった。


これで激怒のもとに言い返させ、

その口汚さを衆人に見せつけてやろう、

と目論んだのである。


だが、対する王衍は涼しい顔。

おもむろに、言う。


「クズだな、お前。

 ようやくその本性を著したか」


裴邈さん、華麗なる自爆……。


なお曹魏そうぎ末、竹林七賢ちくりんしちけん阮籍げんせき

クズと思った相手に向かって

白目をむいて対応したことから

「白眼」とはクズの比喩として

用いられている。




太傅有三才:劉慶孫長才,潘陽仲大才,裴景聲清才。

太傅は三才を有す:劉慶孫の長才、潘陽仲の大才、裴景聲の清才。

(賞譽28)


潘陽仲見王敦小時,謂曰:「君蜂目已露,但豺聲未振耳。必能食人,亦當為人所食。

潘陽仲は王敦の小さき時を見るに、謂いて曰く:「君が蜂目は已にして露わなれど、但だ豺聲は未だ振わざるのみ。必ずや人を食う能えど、亦た當に人に食わるる所と為らん」と。

(識鑒6)


王夷甫與裴景聲志好不同。景聲惡欲取之,卒不能回。乃故詣王,肆言極罵,要王答己,欲以分謗。王不為動色,徐曰:「白眼兒遂作。」

王夷甫と裴景聲とは志好を同じくせず。景聲は惡みて之を取らんと欲せど、卒ち回らす能わず。乃ち故に王を詣で、言を肆せること罵れるを極みたれば、王が己に答えんことを要め、以て謗りを分かたんと欲す。王は為に色の動かさざれば、徐ろに曰く:「白眼兒は遂にして作したり」と。

(雅量11)




藩滔と裴邈はここにしかいないので(裴邈は一応荀彧じゅんいくにもいますが)特に気にすることもないです。


しかし司馬越の三才がことごとく人品よろしからぬ感じで描かれてますなー。その上、本人はぜんぜん姿を現さない。司馬衷となかよし八王が、まるまるアンタッチャブルな感じですね。

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