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王導12  蘇峻の乱、その後

蘇峻そしゅんの乱が平定された後、

王導おうどう庾亮ゆりょうは、孔坦こうたんと言うひとを

丹陽たんよういんに任命しようとした。


丹陽尹、即ち、建康けんこうの都市機能の責任者。

蘇峻の乱によって

ズタズタにされた建康の、である。


は? と孔坦、ついついブチギレる。


「明帝陛下より後事を託されたのは

 貴方がたでしたよね? そして、

 陛下の信任を受けての振る舞いが、

 今回の大乱を招きましたよね?


 私、そこに全然

 関わっていないんですけどね!

 だのに私に

 後始末させようってんですか!


 貴方がたのやっていること、

 言い換えましょうか!


 私の厨房に突然乗り込んできて、

 いきなり腐った肉放り込んで

 おいこれ旨いもんにしろ、

 ってごり押ししてきてんですよ!」


付き合い切れるかボケ、

と孔坦は立ち去る。


そりゃもう丹陽尹になんて

任命も出来ませんよね。




蘇子高事平、王庾諸公欲用孔廷尉為丹陽。亂離之後、百姓彫弊。孔慨然曰:「昔肅祖臨崩、諸君親升御床、並蒙眷識共奉遺詔。孔坦疎賤、不在顧命之列。既有艱難、則以微臣為先。今猶俎上腐肉任人膾截耳!」於是拂衣而去。諸公亦止。


蘇子高の事の平ぐるに、王、庾ら諸公は孔廷尉を用いて丹陽に為さんと欲す。離亂の後、百姓は彫弊す。孔は慨然として曰く「昔に肅祖の崩ぜるに臨み、諸君は親しく御床に升り、並び眷識を蒙り、共に遺詔を奉ず。孔坦は疎賤にして、顧命の列に在らず。既に艱難有らば、則ち微臣を以て先に為さんとす。今猶お俎上の腐肉を人に任せ膾として截せるのみ!」と。是に於いて衣を拂いて去る。諸公も亦た止む。


(方正37)




蘇峻

王敦おうとんの乱鎮圧に大功を挙げたが、その頃実権を握っていた庾亮ゆりょうの人事がとにかく厳格を極めていたため、名将祖逖そてきの弟祖約そやくを始めとする多くの人間が不満をくすぶらせていた。彼らをそそのかし、乱を起こしたのがこの蘇峻である。当時の東晋軍の中でも強者に数えられる蘇峻が起こした叛乱は忽ちのうちに晋軍を破り、果てには建康けんこうを陥落させてしまう。よく滅びなかったな東晋。このような強烈な叛乱であるから、それを平定せしめた陶侃とうかんの威名は否応なしに高まったわけである。


孔坦

蘇峻の乱の際、陶侃とうかんの参謀として大いに手助けをした。という事は建康とは若干距離のある人物でもある。いやまさに国難なんだから助けてやってくださいよ、とは言いたいけれども、庾亮から任命を受けんのはブチ切れるだろうなぁ。「てめえの尻拭いはてめえでしろよ」ってさすがに言いたくなるもんな。

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