ところがここに、
このことにブチギレるのが
陶侃さんの息子、
ある時陶範、
袁宏さんを狭い部屋におびき寄せ、
そこで刃を突き付け、脅す。
「テメェうちの親父の
功績知らねえのか、あ?
なんで東征賦で、ああも親父のこと
ないがしろにしやがった?」
袁宏さん、豚である。
武力ゼロである。
逃げようがない。
けど、震えながらも、言う。
「わ、わわわわ私めは、
とととと陶公のこと、
か、っかか、書きましたよ!
かかか書きましたってば!」
そして、謳い上げるのだ。
精金百鍊 在割能斷
磨き上げられたるその武は、
大いに敵を打ち倒した。
功則治人 職思靖亂
任地にては大いに治安を整え、
反乱を鎮定。
長沙之勳 為史所讚
反乱者、
その功績は、史に絶賛されよう」
……即興で考えたろこいつ。
袁宏始作東征賦,都不道陶公。胡奴誘之狹室中,臨以白刃,曰:「先公勳業如是!君作東征賦,云何相忽略?」宏窘蹙無計,便答:「我大道公,何以云無?」因誦曰:「精金百鍊,在割能斷。功則治人,職思靖亂。長沙之勳,為史所讚。」
袁宏は始め東征賦を作せるも、都べて陶公を道わず。胡奴は之を狹き室中に誘い、白刃を以て臨み、曰く:「先公が勳業は是の如し! 君は東征賦を作せるに、云何ぞ相い忽略したらんか?」と。宏は窘蹙し計無く、便ち答うるらく:「我れ、大いに公を道いたり、何をか以て云いたる無からんや?」と。因りて誦して曰く:「精金は百に鍊られ,割るに在りて能く斷つ。功は則ち人を治め,職は亂を靖んずるを思ゆ。長沙の勳、史の讚ずる所と為らん」と。
(文學97)
袁宏さんは
杜弢