つまり人臣の極み、三公に上り詰めた。
しかし郗鑒さまは、
この辞令を受け取った時に、
周辺のものに向けて、
こう漏らしている。
「常日頃、それほど多くのものを
望んできたつもりはない。
世の中が乱れてしまっていたために、
ついにはこのような地位にまで
なってしまった。
前漢の時代、
後に失政をして自殺した
丞相の地位についた時、
どこかから鐘の音が聞こえてきた、
と言われている。
今、私の胸中でも、
その鐘が鳴っているよ。
分不相応な叙命を得てしまい、
実に恥ずかしい限りだ」
郗太尉拜司空,語同坐曰:「平生意不在多,值世故紛紜,遂至台鼎。朱博翰音,實愧於懷。」
郗太尉は司空を拜せるに、同坐に語りて曰く:「平生より意は多きを在さず、世故の紛紜たるに值い、遂には台鼎に至る。朱博の翰音、實に懷けるに愧づ」と。
(言語38)
陶侃、郗鑒と言う「蘇峻から晋を救った英雄」の扱いがかなりいい。何と言うか、庾亮さん涙目である。とは言っても扱いの重さ的には明らかに庾亮の勝ちなんだけど。