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郗鑒2  朱博の翰音

郗鑒ちかんさまは司空、

つまり人臣の極み、三公に上り詰めた。


しかし郗鑒さまは、

この辞令を受け取った時に、

周辺のものに向けて、

こう漏らしている。


「常日頃、それほど多くのものを

 望んできたつもりはない。

 世の中が乱れてしまっていたために、

 ついにはこのような地位にまで

 なってしまった。


 前漢の時代、

 後に失政をして自殺した朱博しゅはく

 丞相の地位についた時、

 どこかから鐘の音が聞こえてきた、

 と言われている。


 今、私の胸中でも、

 その鐘が鳴っているよ。

 分不相応な叙命を得てしまい、

 実に恥ずかしい限りだ」




郗太尉拜司空,語同坐曰:「平生意不在多,值世故紛紜,遂至台鼎。朱博翰音,實愧於懷。」


郗太尉は司空を拜せるに、同坐に語りて曰く:「平生より意は多きを在さず、世故の紛紜たるに值い、遂には台鼎に至る。朱博の翰音、實に懷けるに愧づ」と。


(言語38)




陶侃、郗鑒と言う「蘇峻から晋を救った英雄」の扱いがかなりいい。何と言うか、庾亮さん涙目である。とは言っても扱いの重さ的には明らかに庾亮の勝ちなんだけど。

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