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庾亮6  諱を犯す

庾闡ゆせん揚都賦ようとふを書いた時のこと。


揚都賦。謝安しゃあんさまが

「どっかで見たことある表現ばっかで、

 あんまり新奇性は感じられないな」と

切って捨てたアレだ。


ここで庾闡、温嶠おんきょう庾亮ゆりょうについて


「温嶠どのは大義の道しるべ、

 庾亮どのは民衆の仰ぎ見る所。

 声望は銅鑼の音のように響き渡り、

 徳望のまばゆきは玉の輝きに似る」


と語っていた。

さて庾亮さま、賦ができたと聞き、

早速読ませてほしい、とねだる。

そして合わせて、贈り物を届けてきた。


庾闡さん、あっやべ、と気付いた。

賦の中に「亮」を使ってしまっている。


まさかこんなところで

諱犯しちゃうとかマジかよ、

慌てて「亮」を「潤」に書き換える。


さてそうすると今度は「望」がおかしい。

韻が踏めなくなってしまう。


そこで「望」の字も「俊」に

書き換えるのだった。




庾闡始作揚都賦,道溫、庾云:「溫挺義之標,庾作民之望。方響則金聲,比德則玉亮。」庾公聞賦成,求看,兼贈貺之。闡更改「望」為「俊」,以「亮」為「潤」云。


庾闡の始め揚都賦を作せるに、溫、庾に道いて云えらく:「溫は義の標を挺べ、庾は民の望を作す。方さに響かるるは則ち金聲、比の德は則ち玉亮」と。庾公は賦の成るるを聞き、看んことを求め、兼ねて之に貺いを贈る。闡は更に「望」を改め「俊」と為し、「亮」を以て「潤」に云うを為す。


(文學77)




いや書いた時に気付けよ。


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