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王胡之4 少司命

王胡之おうこし謝安しゃあんさまの宴席で詩を吟じる。


入不言兮出不辭

乘回風兮載雲旗

 死にゆく者のいる部屋に、

 かれは言葉もなしで入ってくる。

 そして立ち去る言葉もなしに、

 死にゆく者と共に去る。

 かれは巡り巡る風に乗り、

 たなびく雲の上に載って、

 去りゆくのだ。


楚辞そじ少司命しょうしめい

天空の皇居、紫微垣しびえんの中に座す

星座の一つをテーマに歌われたものだ。


後日王胡之は、

その詩を歌った時のことを、

このように話している。


「あれを吟じていた時は、

 まるでこの世に我一人のみが

 居るようであった」




王司州在謝公坐,詠「入不言兮出不辭,乘回風兮載雲旗」。語人云:「當爾時,覺一坐無人。」


王司州は謝公の坐に在りて詠えらく「入りては言せず、出でては辭せず、回風に乘りては雲旗に載る」と。人に語りて云えらく:「當に爾の時、一坐に人無きを覺ゆ」と。


(豪爽12)




少司命と言う詩は、熱烈なラブソングのようにも見える。


悲莫悲兮生別離 樂莫樂兮新相知

 悲しきは生別離より悲しきはなく、

 楽しきは新相知より楽しきはなし。


なんて句も見えたり。まー、かなりうっとり歌ったんだろうね、このオッサン。


謝安さまの評価を伺いたいところですが、豪爽にあること考えれば、絶賛だったんでしょう。

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