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康僧淵2 逃れ難き世俗の目

康僧淵こうそうえん豫章よしょうにいた頃、

町の中心部から十里ほど離れたところに

寺院を建立した。


側には峰々が連なり、

河川が滔々と流れている。

庭園には木々が茂り、

清流は庭園内に注ぐ。


その静かな環境の中、

研鑽し、時には門弟に教えを授け、

またある時には仏理の探求に努めた。


そんなところに押しかけるのが

庾亮ゆりょうさまら名士たちである。

その寺院の雰囲気と、

内部のつつましやかな装いは。

まさに風流のきわみ。


加えてそこを運営する康僧淵が、

またこの寺の主として、

泰然自若の振る舞い。


こんなん、否が応でも

名声が上がろうというものである。


そして、オチはつきますよね。


康僧淵、そう言う名声が嫌いで

鄙地に拠点を構えたんです。

けど、それすら台無しにされた。


まぁ、その寺院からも

脱出しちゃいますよね。




康僧淵在豫章,去郭數十里,立精舍。旁連嶺,帶長川,芳林列於軒庭,清流激於堂宇。乃閒居研講,希心理味,庾公諸人多往看之。觀其運用吐納,風流轉佳。加已處之怡然,亦有以自得,聲名乃興。後不堪,遂出。


康僧淵の豫章に在せるに、郭より去ること數十里、精舍を立つ。連嶺の旁ら、長川に帶び、軒庭に芳林を列ぬ。清流は堂宇に激す。乃ち研講し、希心理味せば、庾公ら諸もろの人は多く往きて之を看る。其の運用吐納を觀るに、風流は轉だ佳たり。加えて已に之の處は怡然とし、亦た以て自ら得たるを有し、聲名は乃ち興る。後に堪らず、遂に出づ。


(棲逸11)




「これだから顔の平たい民族は……」とか、胡人の康僧淵さんなら思ってそうです。

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