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庾翼2  ポストマンの進物

庾翼ゆよくが北伐を企画した時のこと。


軍の編成は終了した。さあ出撃だ。

が、うまく進軍ができない。

襄陽じょうようの町で足止めを喰う。


そのニュースを聞いた殷羨いんせん

折れた如意にょい(小さな杖)を送った。


意に如かず、つまり

「思い通りにいかないものですね?」

というわけだ。性格最悪だなこいつ。


とは言え、この手のアオリにキレたら

貴族らしいふるまいじゃない。

庾翼、筆を執るよ。


「進物、確かに頂戴致しました。

 多少痛みもございますが、

 何の、修理して

 大切に使わせて頂きます」


「意に如く」ようにしますよ、ってね。

綺麗に返せるもんですねー。




庾征西大舉征胡,既成行,止鎮襄陽。殷豫章與書,送一折角如意以調之。庾答書曰:「得所致,雖是敗物,猶欲理而用之。」


庾征西の大いに征胡すべく舉ぐるに、舉の既に行けるは成れど、止まりて襄陽に鎮ず。殷豫章は書にて一なる角の折れた如意を送り、以て之を調う。庾は書にて答えて曰く:「致せる所得たり、是れ敗物と雖も、猶お理めて之を用いんと欲す」と。


(排調23)




如意

仏具なんだが、元々の用途はいわゆる「孫の手」。「痒いところに手が届く」から、「意に如くもの」としての名前がついたんだそーです。



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