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殷羨   不良ポストマン

殷羨いんせん豫章よしょう郡に配属となった。


さあ出発するぞ、と言うとき、

建康けんこうの人びとが殷羨に、

ぼくも私も、と手紙を託す。

その数数百余り。


アホほどの手紙を抱えた殷羨、

石頭せきとう城から長江を望む。


手紙をぶちまける!

そして叫ぶ!


「沈まば沈め、浮かばば浮かべ!

 誰がプリーズ Mr. ポストマンじゃ!」


なら受け取んなよ。




殷洪喬作豫章郡,臨去,都下人因附百許函書。既至石頭,悉擲水中,因祝曰:「沈者自沈,浮者自浮,殷洪喬不能作致書郵。」


殷洪喬の豫章郡に作さるに、去るに臨み、都下の人は因りて百許りの函書を附す。既に石頭に至らば、悉く水中に擲ち、因りて祝して曰く:「沈む者は自ら沈み、浮く者は自ら浮く、殷洪喬は書郵を致すに作す能わず」と。


(任誕31)




なお豫章は建康けんこうから見て、長江の上流。

手紙が沈もうが浮かぼうが、

絶対に届きません。

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