目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

王羲之9  奥さまつおい2

のちに劉宋りゅうそうの幹部として働くことになる、

王導おうどうさまのひ孫、王恵おうけい


かれは幼い頃、

王羲之おうぎしの妻の氏を見舞った事があった。

その頃の郗氏は、もう

九十代にもなろうかとしている頃。


「おばあさま、目や耳の具合は

 いかがなのでしょうか?」


と語りかける。

すると郗氏、凛と返答した。


「髪が白くなり、

 歯が抜け落ちるのは、

 身体に関係すること。

 ならば、衰えても仕方ありません。


 しかし目や耳は、

 我が心に絡んでくるもの。

 どうして人におくれを

 取ることがありましょう?」


いや夫人、目や耳も

普通に身体ですよ……




王尚書惠嘗看王右軍夫人,問:「眼耳未覺惡不?」答曰:「髮白齒落,屬乎形骸;至於眼耳,關於神明,那可便與人隔?」


王尚書の惠は嘗て王右軍夫人を看るに、問うらく:「眼耳は未だ覺えの惡しからずや不や?」と。答えて曰く:「髮の白み齒の落つるは、形骸に屬したり。眼耳に至りては、神明に關わりたれば、那んぞ便ち人と隔たらんか?」と。


(賢媛31)



王恵

385 年生まれ。一方の郗氏は 313 生まれの郗愔ちいんの姉だから、大まかに言えば 310 年生まれとなるだろうか。75 年差なら、ギリギリ会話ができていてもおかしくはない年齢差である。劉宋と王羲之って案外近かったんだな。しかしちみっこの心配に凛と虚勢を張る郗氏毅然かわゆい。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?